新しい世界への感動と挑戦が原動力。心配性の国・日本に必要なのは文化だ
安藤忠雄(建築家) ×宮本亜門(演出家)
2017年には「安藤忠雄展-挑戦-」と題し、これまでの軌跡と未来への展望にせまる展覧会で、およそ30万人を動員。いまだ衰えぬ挑戦意欲をもつ建築家・安藤忠雄。そんな活躍に、常に憧れ、心の支えだったと語る、世界で活躍する演出家・宮本亜門。
今、建築界と演劇界の雄が唱えるもの、それは「文化の力」。そして、世界で活躍しているからこそ強い問題意識をもち、そして奇しくも同じ「心配性」だと感じたという国・日本。その行く末に必要なのは、楽しく、感動的で、振り切れた挑戦であるという。
安藤宮本さんの仕事は役者の心を読んで、自分の目標を作って、それぞれの心を読んで、組み立てていかないといけない。それで自分の言うとおりに動く役者よりは、ちょっとずれた役者のほうがいいのではないかと私は思うんですけどね。
宮本おっしゃるとおりですね。特に海外で多く仕事をさせてもらうと、まったく違う意見とか、突拍子もない、周りの人が「何を言ってるの?」ということこそ面白いというのは変わってきましたね、正直。やはり、ニューヨークやロンドンなどで仕事をしていると、みんな本当、好き勝手やるんです。
竹内そうなのですか。
宮本平気でぶつかってくる。喧嘩しているわけではなくて、意見が違うということを話していくと、そのなかで話し合いがまた発酵していって、次のアイデアを生むことが多いんです。いろいろな意見がぶつかるから僕は学べている。これがもし、自分の言うとおりだったらちっとも面白くない。
安藤だからニューヨークなんかでやると、俳優さんみんな違う。これは大変だろうなって。……どうなんですか?
宮本大変でしょ。安藤さんこそ……。
安藤私なんかは建設業だから、ビジネスライクにスーッと作っていくから。
宮本ちょっと待って。安藤さんがビジネスライクなんですか?
安藤いやいや、私が設計するときには一生懸命やっているけども……。
宮本でも、いろいろな障害が次々来るでしょ。安藤さんが海外で、イタリアで、たとえば建物の中とコラボレーションするときとか、建物を建てるとき、国によってもまた違ったりするんじゃないですか?
安藤違うでしょうけども、まず私はヨーロッパにしたり、アメリカにしたりするときに、「チームができるか」ということを最初にしている。構造、設備、材料、そういうお互いに作っていくチームができるところとしかやらない。日本人は外国へ連れていったことがない。
宮本そうなんですか。
安藤全部、外国の人としかやらない。そうしたら最初は揉めるというか、ぶつかります。そこが面白い。
宮本たとえば、安藤さんがやっているあの丁寧なコンクリート。日本人にしかできないようなこの丁寧感は、なかなか彼らはないことも多いですよね。
安藤多いです。
宮本そのときはどうやって話をして、建物を自分の魅力的なやりたいものへもっていくんですか?
安藤やっぱり何回も話をしたり、向こうからこっちへ来てもらったり、こっちから向こうへ行ったりしていくと、だんだん誇りが出てくる。仕事に誇りを持っている人はやりますよ。 「俺はやるぞ!」という誇りを持ってきたら、技術的にはできますね。
宮本どうやって、彼らは誇りを?
安藤自分たちが間違いなしに「俺ら、イタリア人が日本人なんかに負けるか!」ってあるじゃない。それから「イタリア人は世界でも一番建築が好きですよ」というのがあるじゃない。だんだん誇りが出てきたら、まずできます。全然問題ないです。
宮本彼らのもともとの文化と、もともとの誇りをうまく一緒に合わせあいながらやるということ?
安藤そう。
竹内2017年に建築展の「-挑戦-」を開かれましたよね。これはどういった意図でこの展覧会を開催されたのですか?
安藤10周年記念で美術館の館長さんから「建築展をやってくれ」と。国立でありながらお金がない。10万人ぐらい来たらなんとかやっていけるということだけは分かったんですけど、よっぽど頑張らなければならないと思いまして、人々が驚くことをやらなければならない。 だけどまず、行ってみようという魅力がなかった。
宮本やはり行って、自分の想像以下だったら、その人は……。
安藤二度と来ませんからね。大体、美術館の展覧会で原物を作った人がいないんですよ。それで、「光の教会」を作ろうということで。
宮本驚きましたね。
安藤「光の教会」は昔、3500万円でできた。「あそこを作ったら、持って帰らないかんから7000万円かかる。まあいいだろう、ドンと行こう」「本当に作るの?」という人が多くて、あるのか見にいかなければならないから、そういう人も来るわけです。それで、フランスで今やっている「ブルス・ドゥ・コメルス」という建物の大きな模型があるんですが、「お金がかかりますよ」「そうですか。自分らで作ったほうがいいですね」ということで作ったわけですよ。模型屋さんが作った模型は一つもなしにしようということで、私は大学2年生を呼んだんです、6人。「やってみ」と。
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