イノベーション都市深圳レポート2 独自エコシステムがユニコーン企業を創出


時代刺激人 Vol. 302

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

深圳地方政府のイノベーション積極財政支援も見逃せない、背景に潤沢な法人税収

これらの指摘は、繰り返し事だが、深圳市の特殊な歴史に起因する。40年前に改革開放路線を打ち出した当時のトップリーダー、鄧小平氏の指示で、深圳市が経済特区指定を受け、輸出向け電子製品組み立て型産業集積の「世界の工場」となったことは今にすればプラスに働いた。それによってサプライチェーン網というハードウエアイノベーションの素地が出来た。その後、文化大革命の影響を恐れ香港などに逃げた企業家、技術者らが深圳に戻り、ソフトウエアイノベーションを起こす担い手となったことも見逃せない。

加えて、前回レポートで述べたとおり、中国国内でも珍しい人口1190万人の「移民都市」の平均年齢が32.5歳という若手中心の人口構成であること、子供や高齢者が少なく社会保障関連の財政負担を強いられる必要がないこと、アグレッシブなベンチャー企業による法人税収がケタ外れに多くイノベーション対策に回せる財政資金が潤沢であることなどから、深圳地方政府がイノベーションを財政面で積極支援したことも重要ファクターだ。

起業してからわずか数年で時価評価10億ドルのユニコーン企業などが目白押し

さて、ここで、起業してからわずか数年でユニコーン企業、あるいはそれに匹敵する事業規模に急成長した深圳のスタートアップ企業のことをレポートしよう。ユニコーン企業はネット上の百科事典ウイキペディアによると、時価評価額が10億ドル以上の株式非上場のスタートアップ企業のことだ。ベンチャーキャピタリストのアイリーン・リー氏が、成功企業の希少性を表すため、あえて神話的な動物のユニコーンから名前をとったという。米国シリコンバレーに集中するが、最近は北京、深圳でも目立って増えてきている。

私が現場で目にしたユニコ-ン企業の1つは深圳拠点のDJIだ。空中からの撮影などに使う無人航空機ドローンの開発・生産・販売に取り組む企業で、2006年創業からわずか12年で世界シェア70%を有する企業に急成長、しかも2017年時点の売上高が円換算3000億円にのぼる。創業時は20人スタートだったが、今や社員数1万1000人に膨れ上がり、その主力が研究開発に取り組む人たちで、しかも社員平均年齢が26歳というから驚きだ。

ドローン開発製造のDJIは創業時から海外特化、世界シェア70%の企業に急成長

創業リーダーのフランク・ワンさんには今回、会えなかったが、ワンさんが香港科学技術大学院在学中、ヘリコプター制御技術の研究成果がビジネスになるとみて起業、試行錯誤の末に4つのプロペラをつけた「ファントム1」という小型ドローンを開発し販売したら時代のニーズに合い一気に開花した、という。
DJI関係者によると、成功の理由は、創業当初から欧米市場に販売特化したこと。欧米の安全規制ルールが明確、アウトドア生活を楽しみドローンニーズが高いことを市場動向調査で見極めた結果だそうだ。一般的には経済成長で中国国内の消費購買力がついてきているため、起業したら、まずは自国市場を狙うのが普通だろうが、DJIはそこが違っていて、売上高の海外向けが突出している。ただ、最近は中国国内も都市化が進み、ホビーとしてのドローンニーズが高まってきており、国内市場対策にも力を入れる、という。
本社ビル近くのショールームで、手のひらに乗る超小型ドローンなど個人ホビー用のものから商業用機種まで見ると同時に、屋外でいくつか空中飛行操作も見せてもらった。空中で静止させたりする制御機能の付いたコントローラーは、画素数がケタ外れに大きい高性能カメラとリンク、空中撮影するのだが、技術レベルは確かに高かった。

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