がんばれ、メディアの調査報道 朝日「プロメテウス」はユニーク


時代刺激人 Vol. 184

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

 新聞にしろ、テレビにしろ、日々のニュースの面白さは何と言っても、誰もが知らない、文字どおりのスクープ記事だ。現場取材に携わる記者の最大の使命は、こうしたスクープニュースを独自取材でつかみ、ニュースとして報じることであるのは言うまでもない。

 新聞にしろ、テレビにしろ、日々のニュースの面白さは何と言っても、誰もが知らない、文字どおりのスクープ記事だ。現場取材に携わる記者の最大の使命は、こうしたスクープニュースを独自取材でつかみ、ニュースとして報じることであるのは言うまでもない。その場合、当然、ニュースの価値判断が重要になる。それは「お騒がせジャーナリズム」と言われるような、メディアの側が面白がってニュース仕立てにするものではない。地道に、丹念な取材で関係者のウラをとって隠されていた真相を報じることによって、時代が大きく違った方向に動いていく、といったものだ。

地道で丹念な取材でスクープに、リクルート事件や
旧石器ねつ造事件など

そういったスクープニュースは、当然のことながら、記者会見での発表からは出てこない。ましてや取材先のリーク情報で生まれるものでもない。独自取材、端的には取材のターゲットを決めて、丹念に取材を繰り返す調査報道が軸になる。それで思い出すのは、朝日新聞のリクルート事件報道だ。
リクルート社が関連企業の未公開株を政治家や財界人に譲渡し、店頭公開後の株価跳ね上がりで転売すれば売却益をフトコロに入れることが出来ることを承知の上で、利益供与したものだが、たまたま朝日新聞川崎支局が1988年、川崎市助役への未公開株譲渡を取り上げたら、それが次第に中央の政界などに波及していることが判明し、一気に贈収賄スキャンダル事件に発展した問題だ。見事な調査報道だった。

同じ調査報道では、毎日新聞で2000年に報じた「旧石器ねつ造事件」のスクープ記事も記憶に新しい。当時、宮城県の上高森遺跡などで「このあたりに間違いなくある」との予言で掘り起こすと歴史的な石器などが出てきて石器発掘ブームを生み出した考古学研究家が、実は事前に石器を埋め込んでいたということが、毎日新聞記者の地道な調査報道で判明したものだ。

原発事故直後の「官邸の5日間」報じた「プロメテウスの罠」は
新スタイル

そこで、今回は、新しいスタイルの調査報道の問題を取り上げよう。朝日新聞がいま、朝刊3面の左側で日々、コラムのような形で報じている「プロメテウスの罠」企画がそれだ。
昨年の3.11原発事故直後の首相官邸での菅直人前首相らの危機管理対応を独自の取材で報じた「官邸の5日間」では、朝日新聞特別報道部の記者が、時々刻々、緊張感を伴いながら事態推移する中で、首相官邸がどういった危機対応をしたのかを、現場にいた当時の政治家に直接あたって取材し、それら政治家のメモや記憶を掘り起こして当時を再現しながら、日本の政治の中枢の危機管理の現実を生々しく描き出している。

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