世界に福島事故の教訓発信を 脱「原発安全神話」宣言も必要


時代刺激人 Vol. 192

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

 日本中のみならず、世界の多くの国々を震撼させた東京電力福島第1原発事故から約1年5か月がたつ。だが、福島の事故現場は、いまだに原子炉周辺が強い放射線量で覆われていて、事故処理が遅々として進んでいない。

東電は原発安全神話が障害となり、
津波予測にも積極対応せず「人災」に

今回の東電福島第1原発事故を見る限り、原発安全神話に依存して、原発サイトの高さを超える津波の予測が過去にあったにもかかわらず、当時の東電の原子力・立地担当の幹部は「現実的でない」として対策を講じなかった。国会事故調が指摘するとおり、事前に何度もシビアアクシデント対策を講じる機会があったのに、それを怠った「人災」だという結論に至る。
柏崎市でのシンポジウムでは、東電の原発技術者は確か「われわれは原発事故を引き起こさないように、あらゆる対策を講じているので、心配ない」といった反論だったように記憶しているが、私は当時、米国の危機管理対応は目からウロコだった。

国会主導で原発事故の再発防止策や未解明の事故原因調査で
独立委を

前回のコラムでも指摘したが、国会事故調や政府事故調の最終報告書で提言している問題を国会、あるいは政府がどう受け止め具体化するかだ。
政府事故調は最終報告で、「とくに、国は、政府事故調や国会事故調の活動が終わったことをもって福島原発災害に関する事故調査・検証を終えたとするのではなく、引き続き事故原因の究明に主導的に取り組むべきである」と指摘している。
国会事故調は7つの提言の中で、行政府よりも立法府の国会に出番があることを強調し、とくに9月に発足予定の新規制機関を監視する目的で常設の委員会を、また未解明部分の事故原因の究明のため、原子力事業者や行政機関から独立した民間専門家中心の原子力臨時調査委員会(仮称)の新組織をいずれも国会内に作ること――を提言している。

霞が関官僚はレームダック化した民主党政権を様子見、
国会が新システムづくりを

率直に言って、政府事故調の報告書を受け取った政府が、どこまでしっかりかつ真剣に受け止めるのか、定かでない。野田政権は、9月にスタート予定の新規制機関に対応を委ねる考えのようだが、党員の離党などで、ややレームダック化した民主党政権について、霞が関の官僚が様子見と称して政策対応に積極的でない、といった話を聞く。

そういった情勢を見れば、国会事故調に法的権限を与えて原発事故調査を委ねた超党派の国会が今こそ主導権を握り、立法府にふさわしい政策行動をとるべきでないかと思う。現に、メディアの一部では、国会が原発事故対応で責任が問われそうな東電や原子力安全・保安院、原子力委員会のトップらの証人喚問を行うべきだ、といった主張も出ている。
ただ、原発事故を引き起こした業務上過失の部分があるならば、警察当局が刑事責任を問えるかどうか調査をしたらいいのであって、国会はむしろ、二度と原発事故を引き起こさないための新システムづくりに力を注ぐべきだろう。

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