世界中を震撼させる「コロナ」感染リスク


時代刺激人 Vol. 312

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

歴史学者ハラリさん「分離でなく協力・団結を」

こんな問題意識を持っていたら、スケールの大きい発想で同じ問題提起をしている人がいた。イスラエルの歴史学者で哲学者、ユヴァル・ノア・ハラリさんだ。「サピエンス全史」などの著作で有名だが、最近、米TIME誌に「コロナウイルスとの闘いでグローバルな団結を」記事を寄稿している内容がそれだ。素晴らしいので、ぜひ紹介させていただこう。

「多くの人が新型コロナウイルスの大流行をグローバル化のせいにし、この種の感染爆発が再び起こるのを防ぐためには脱グローバル化するしかないと言う。壁を築き、移動を制限し貿易も減らせと。だが、感染症を封じ込めるのに短期の隔離は不可欠だとはいえ、長期の孤立主義政策は経済の崩壊につながるだけだ。真の感染症対策にはならない。むしろ、その正反対だ。大流行への本当の対策は、分離ではなく協力だ」「感染症に見舞われた国は感染爆発についての情報を包み隠さず進んで開示し、各国と協力活用すべきだ」と。

「米国は傍観者でなく指導的役割果たせ」と主張も

極めつけはハラリさんが、米国に対し傍観者ではなく指導的な役割を果たせ、と主張した点だ。「2014年にエボラ出血熱が大流行した時には、米国は指導者の役割をこなした。だが、近年、米国はグローバルなリーダー役を退いてしまった。(中略)今回、新型コロナウイルス危機が勃発した時には傍観者を決め込み、指導的役割を引き受けることも控えている」、「米国が残した空白は、まだ誰にも埋められていない。むしろ、正反対だ。今や外国人嫌悪と孤立主義、そして不信が、国際社会の特徴となっている」と。全く同感だ。

現在の米トランプ政権の「アメリカファースト」といった自国第一主義、そして分断の政策展開は、ハラリさんの指摘どおり、間違いなくパンデミック阻止には大きな障害だ。その米国が今年のG7サミット(先進7か国首脳会議)の主催国だ。トランプ大統領は目先の自身の再選に結び付くことならば、積極姿勢を見せるが、それ以外では節操がなく、見識などが見られない。でも、米国は腐っても鯛(タイ)で、グローバルリーダーの国だ。
G7サミットへの米国の対応に関し、トランプ大統領に対し「今はグローバル社会の分断ではない。新型コロナウイルス危機の封じ込めで米国がグローバルガバナンスのリーダーシップを示すことが重要だ。大統領自身が狙う『強い米国を』とは、そのことでないのか」と進言する人間が米国中枢にはいないのだろうか、と思ってしまう。

中国もおわびと同時に危機克服のデータ提供が重要

しかし新型コロナウイルスのパンデミック封じ込めにあたって、米国にだけ指導的な役割を求めているわけでない。中国の責任も重大だ。その中国が今、共産党中央の強力な指導力で封じ込めに成功した、と誇示する動きがあるようだが、この際、「大人の中国」としての対応が重要だ。まずは、当初の危機対応のまずさで世界各国に大きな影響を及ぼしたことに関して、率直にわびる必要がある。重要なのは、メンツよりも真摯な対応姿勢だ。

そのあとが重要だ。中国の総力をあげて危機を乗り切りつつある現状は多くの国に勇気を与える。そこで、当初の武漢市での試行錯誤の現場課題、その後の克服努力や研究のデータなどを提供して世界に貢献したい、と情報発信すれば、間違いなく中国評価が上がる。

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