コロナ感染長期化の「新常態」にどう対応すべきか


時代刺激人 Vol. 314

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

イスラエルは組織的に若手技術エリートを育成

プロジェクト実行委員長で、AI問題の第一人者の松尾東大教授は、「高専生の研究レベルは高く今後に期待が膨らむ。教育現場で5年間、AIなど専門技術を学ぶ間に、さまざまな技術を組み合わせて新たな価値を創出しつつある。今回のDCONは、研究成果発表の場だが、今後は技術ベンチャーを生み出す場にしていきたい」と述べたのが印象的だった。

そういえば、中東のイノベーション大国イスラエルの若手技術エリートづくりはずば抜けている。毎年、高校生1万人の中から成績優秀な男女50人を選び「タルピオット」という、3年間の技術エリート育成プログラムを展開している。物理、数学、コンピューターサイエンスに特化、イノベーションを生み出す科学技術、戦略構想などを早くから学ばせるのだ。これら技術エリートたちは、国家のミッションも担うが、国防軍から民生転用されたサイバー技術など数多くの技術を活用、起業して世界で羽ばたいている。学ぶことが多い。

日本も高専制度を活用し若手イノベーター養成を

日本では、イスラエルに匹敵する技術エリート養成プログラムが全く見当たらない。強いて言えば、高等専門学校制度がその1つだ。中学卒業後、高校、大学に進む一般進学ルートとは別ルートの高専に入学し5年間、専門技術教育を受ける。今は全国57校、6万人の学生数がいる、という。今回の「高専DCON2020」を見る限り、大きな期待が持てる。

日本は、モノづくりを競う世界の技能五輪でのメダル獲得数に関して、かつては先端を走っていたが、2017年9位、19年7位と低迷している。今回の大会で、技術人材発掘に関心のある企業サイドからは「卒業後は優先的に高専生を採用したい」との声が出たが、私は、大学が積極的に彼らの特別入学に道を開き若手イノベーター養成をすべきだと思う。

政府「選択する未来」委は「今が変革の時だ」と主張

さて、冒頭のコロナ危機の「新常態」化に、どう対応するかが当面の最重要課題だ。そんな矢先、政府の経済財政諮問会議の中にある「選択する未来2.0」委員会(座長・翁百合日本総研理事長)がまとめた中間報告での提言はなかなか刺激的で、興味深い。なぜかメディアが取り上げておらず、あまりオープンにもなっていないので、ぜひ紹介しよう。

中間報告の冒頭部分で「この数年の取り組みが、日本の未来を左右するだろう。今が選択の時だ」との問題意識だ。そのあとの部分で、さらに踏み込み、「この機会を活かせなければ、日本は変わることが出来ず、付加価値生産性の低迷が続き、世界の中で埋没しかねない。その強い危機意識が国民各層で広く共有され、後戻りしないことを期待したい」と。「新たな変化に即応した変革を進めることが不可欠で、もはや一刻の猶予も許されない」とも。

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