中国政治が社会不安に過敏 間違いなく地殻変動の予兆


時代刺激人 Vol. 177

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

 中国で最近、起きている政治のさまざまな動きは、ずばり興味津々だ。中国経済を定点観測している中国ウオッチャーの私から見ても、それらの動きは、政治の世界の権力闘争とは違って中国の政治、そして経済や社会の地殻変動につながる動きのように見える。

温家宝首相もわざわざ農村視察し民主的選挙支持を表明、
事態重視の表れ

そればかりでない。今回の鳥坎村の問題に関連して、温家宝首相までが村長選挙の行われた今年3月直前、わざわざ広東省を訪れ、中国で初めての民主的な直接選挙による村長選を実施すべきだ、と発言している。

実は、同じ広東省の広州市郊外の望崗村でも、この鳥坎村での民主化の動きに刺激されて、同じような地元の政治リーダーの共産党書記の不正蓄財問題などに対する反発や実態調査を求める村民デモが起きていた。そして、温家宝首相は、メディア報道によると、この望崗村の近くの農村視察の際に「土地は農民の貴重な財産だ。この権利がしっかりと保証されることが大事だ」述べている。明らかに、広東省のいくつかの村で起きた動きを、北京中央の政治指導部としては無視できないと判断した結果であることは間違いない。

広東省の寒村の民主化要求の動きがネット通じて
中国全土波及を警戒?

この広東省の共産党書記の汪洋氏、そして温家宝首相の2人の政治的なアクションによって、鳥坎村で行われた3月初めの選挙で、抗議運動のリーダーが見事に新村長に選出された。
今までは見向きもされなかった小さな村の問題が、ネットを通じて、中国全土に大きく報じられたり、またツイッターなどソーシャルネットワークで情報発信されたりしたら、あっという間に中国全体の問題に波及しかねない。下手をすると社会不安どころか、民主化要求というもっと大きなうねりになる恐れもある。
そうなれば、共産党政治への反発や不審に発展しかけないとの危機感があってのことだろう、と容易に想像できる。広東省の村の動きに対する中国共産党のアクションは、まさに地殻変動につながる話だ。

北京中央の政治指導者は権力闘争している余裕など、ないはず

中国ウオッチャーの1人として、私は、中国政治の地殻変動に関して、率直にこう思う。つまり、中国の政治指導者たちは、今年秋に開催予定の5年に1度の中国共産党大会での新指導部体制づくりをめぐる主導権争い、正しくは権力闘争を演じている。胡錦濤主席ら率いる主流派の共産主義青年団(共青団)と、次期主席が有力の習近平副主席らの属する太子党、いわゆる過去の中国共産党の政治リーダーの子弟グループ間の争いがそれだ。

しかし、その彼らにとっても、中国共産党が絶対的に安定した政治基盤とは思っていないはず。それどころか、急速な経済成長の対価として、冒頭に申し上げた拡大する格差問題が表面化、さらには今回の広東省の寒村での地方共産党幹部の汚職や腐敗に対する住民の反発の顕在化が、共産党政治への否定につながるリスクを感じ取っているはずだ。
だからこそ、汪洋広東省共産党書記、温家宝首相が現場に出向いて民主化選挙を容認せざるを得なくなったのだ。中国政治に地殻変動の予兆がどんどん出始めており、政治指導者たちも本当は権力闘争をしていつ余裕などないのでないかと思う。

日経新聞企画は
「共産党の関心は政治改革よりも巧みな統治の在り方」と指摘

この点に関して、日経新聞3月1日付の朝刊企画「中国政治攻防」で、特派員レポートを軸に興味深い指摘があるので引用させていただこう。

「鳥坎村の例は、従来の力任せの統治システムが通用しない時代が迫っていることの証左だ。だが、『鳥坎モデル』が中国全土で通用する保証はどこにもない。民衆蜂起はもはやチベット自治区やウイグル自治区だけの問題ではない。輸出減速が直撃する江蘇省や浙江省などでは民衆のデモは日常茶飯事だ。多様化し先鋭化する『群衆』の声をいかに管理するか。共産党の関心は、真の政治改革よりも、巧みな統治のあり方に移りつつある」と。

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