劣化が著しい日本、新ソフトパワーで再興を


時代刺激人 Vol. 322

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

高齢化対応の介護サービスシステムに中国などが関心

具体的に申し上げよう。人口の高齢社会化に伴って、たとえば介護サービスシステムが間違いなく重要課題になってくる。高齢社会の世界フロントランナーの立場にある日本は、介護サービスの分野で数多くの先進取り組み事例を持っている。そこで「介護先進国」デンマークなどと連携して、優れたモデル事例を新たにつくって世界にアピールすればいい。

アジアで人口高齢化の進む中国、ベトナム、タイ、シンガポールが経済成長を優先するか、介護など社会保障に積極対応するかの板挟み状態。特に中国は、社会保障対応を怠ると社会問題化しかねず、先進国入り?目前で「中進国の壁」問題に直面している。関係者によれば、その中国が日本の介護システムに強い関心を持ち、研究対象にしている、という。

そこで日本の出番だ。これまでの介護現場での失敗体験、それらの課題克服にどう取り組んだか情報開示すると同時に、合理的な介護システム、介護ロボットの導入事例などをアピールすればいい。介護サービスのみならず高齢者医療、認知症などの政策課題は何か、その
対策事例に関しても情報共有、アジア関係国間のデータベースづくりを主導すればいい。いずれもニーズが高いもので、情報開示すれば日本への高評価は間違いなし、と思う。

若手に次代を委ね「老人支配国」イメージ払しょくを

とはいえ高齢化社会のさまざまな課題を抱える日本が、「老人支配国」と思われている点を払しょくするのは最重要テーマだ。プライド高い高齢の政治家、企業経営者の背中を押し世代交代を積極的に進めるのは難しい。しかしメディアを軸に論争を巻き起こし、世代交代によって日本を変える、という状況を作り出すことが重要だ。

その場合、人生椅子取りゲームも新しい発想が必要だ。シニア世代は椅子にしがみつくのでなく若手に席を譲る代わりに、経験や人脈ネットワークを生かしてシニア用の椅子を独自につくって座ればいい。そして大胆なイノベーションの担い手、新時代を作り出す先兵役はできるだけ若手世代に委ね、自らはバックアップ役に回る。それだけでない。シニアの独自発想で面白い成熟市場をつくり、経済の掘り起こしを担えばいい。

今後10年間で150兆円のGX・脱炭素戦略投資に期待

ただ、日本の今後を考えると、高齢社会&成熟社会国・日本では1億2000万人の巨大人口を抱える日本を支え切れない。その経済を支えるイノベーション投資が必要になる。
その1つとして、日本政府が今年2月に決めたGX(グリーン・トランスフォーメーション)戦略が興味深い。2023年度から10年間で政府、民間合わせて総額150兆円の巨額投資を軸にGX・脱炭素戦略を実行に移す、という。中でも政府主導で発行するGX経済移行債がカギを握る。政府が民間投資を引き出す先導役となり、この債券を10年間、毎年発行して20兆円を確保、中核エネルギー源になる水素、アンモニア活用のため、18プロジェクトに7564億円規模のグリーンイノベーション投資などを行う計画だ。

バブル崩壊後の日本経済が30年間も低迷した最大の原因は、イノベーション投資が起きなかったことだろう。責任は政府のみならず、民間企業にもある。中でも民間企業はリスク回避が先行して、イノベーションにチャレンジする投資を行わず、自社株買いなどの後ろ向き投資に充てた。今回のGX戦略投資では、その反省に立ち積極投資を望みたい。

関連コンテンツ

運営会社

株式会社矢動丸プロジェクト
https://yadoumaru.co.jp

東京本社
〒104-0061 東京都中央区銀座6-2-1
Daiwa銀座ビル8F
TEL:03-6215-8088
FAX:03-6215-8089
google map

大阪本社
〒530-0001 大阪市北区梅田1-11-4
大阪駅前第4ビル23F
TEL:06-6346-5501
FAX:06-6346-5502
google map

JASRAC許諾番号
9011771002Y45040