50年後に超人口減少社会? 手を打たない政治や行政に問題


時代刺激人 Vol. 171

 最近、メディア報道に苛立ち、憤りをおぼえることがあった。50年後の2060年の日本の総人口が、1億人を大きく割り込んで8600万人に落ち込むと同時に、その40%を高齢層が重々しく占めること、逆に15歳から64歳までの働き手世代の生産年齢人口は4418万人へと一気に減少し、総人口の50%にとどまる、といった超高齢社会、超人口減少社会の姿を浮き彫りにする人口の将来推計が国立社会保障・人口問題研究所から公表されたことをめぐっての報道ぶりのことだ。

新聞やテレビのメディアがそれを一斉に、しかも大々的に報じたのだが、まるで官報というか、政府広報のような報道ぶりで、正直なところ、本来のあるべきメディア報道と大きくかけ離れるものだったため、「何だ、この報道は、、、」と思ったのだ。

「予想できた危機をなぜ防げない」と同じ、
政府広報のメディア報道も問題
 というのも、コダックの経営破たん問題を取り上げた169回コラムで話題にした「予測できた危機をなぜ防げなかったのか?――組織・リーダーが克服すべき3つの障壁」(東洋経済新報社刊)という本のタイトルではないが、間違いなく速いスピードで日本の人口減少が進むのは、誰もが知っていること、とくに、状況に流されて、何の手も打たなければ、そのスピードがさらに加速することもわかっていることだ。

メディアとしては当然、そうした予測できる危機に対して、みんなで何をすべきか、そして政治や行政はどういった手を打ってきたのか、また対策を持ち合わせているのかを鋭く検証し、もし政治や行政に怠慢などがあれば厳しく批判すること、それだけでなく、独自に対案を示すことが言論メディアに課せられた役割でないのか。

メディアOBの時代刺激人ジャーナリストの立場からすれば、現役メディアの政府広報的な、いわば発表を右から左にそのまま伝えるだけの報道姿勢に対して、強い憤りや不満を感じた。

少子化対策では間に合わない、
むしろ外国人人材の移住を認めることだ
 では、私は、この問題に、どう考えるかが問われる。以前から、このコラムでも申し上げていることだが、産めよ、増やせよ的な少子化対策をとるのは、もちろん、重要ながら、産まれた子供たちが大きくなって成人になるまでには、かなりの時間がかかり、働き手の生産年齢人口の減少に歯止めがなかなかかけられない。

どうすればいいか。私の問題意識は、はっきりしている。まずは、外国人に対して、日本という国の門戸を開放し、とくに人材の移住、移民を受け入れることだと思っている。すべての外国人に無制限に門戸開放というのは、現実問題として、リスクを伴う。とくに、北朝鮮が仮に破たんして、難民の形で日本に殺到してきた場合のリスクなどがそれだ。やはり、まずは日本の経済社会に活力をもたらす技術や技能を持った人材の受け入れに門戸を開くことが大事だ。そして、そのためのさまざまな制度設計を急ぐべきだ。

パソナグループの南部さんも「人材開国」論者、
異質なものが混じり合い活力を
 私の友人で、パソナグループ代表の南部靖之さんも、この外国人人材の受け入れに関しては積極論者として有名だ。南部さんは著書「人材開国」(財界研究所刊)で、こう述べている。少し引用させていただこう。「異質なものが混じり合うことから生まれる活力、日本社会の見直し、世界常識とのズレの是正など、『人材開国』がもたらしてくれるであろうメリットは極めて大きいはず」という。そのとおりだ。

米国に、すべて先進モデル例があるとは思わないが、こと、移民政策に関しては、日本は米国を見習い、とくに制度設計を学習することが必要だ。米国は1990年の移民法改正で、就労を目的にした移民枠を大きく拡大し年間14万人にまで増やしたが、その際のビザの割り当ての仕方が興味深い。南部さんが言う「人材開国」とからむ話だ。

米国は5段階で人材の移民に門戸開く、
日本も制度設計面で参考に
 具体的には、米国は人材の移民受け入れに関して、ビザで優先順位をつけている。まずトップには科学や芸術、教育、ビジネス、スポーツ分野で国際的な評価を得ている人材、続いて2番目は、ランクが少し下がるが、同様に国際的な評価を得ている専門的な技能者、さらに3番目は熟練労働者、4番目が各国の政府関係者だ。最後の5番目がいかにも米国らしいところだが、100万ドル以上の投資ができる投資家などの人材で、しかもマネーゲーム的に投資することよりも、その投資によって、10人以上の米国人の雇用創出につながるケースならば文句なくOKという。

日本が、移民政策の大胆な制度変更で、仮に、外国人の人材を積極的に受け入れる場合に、米国と違った人材の移民に道筋をつけるかどうかは、日本自身の判断だ。しかし、少なくともそれら外国人人材が、日本に強い魅力を感じ思わず永住したくなる、日本で起業して新たなビジネスチャンスを得ようとする、日本人と積極的に結婚し日本人であることを誇りにするようになる状況を作り出す経済社会環境づくり、制度設計が重要になる。

日本が外国人人材を引き付ける
魅力を持てるかどうかが課題
 問題は、日本という国が、さまざまな国の人たちにとって、まだまだ魅力あり、かつビジネスを展開しても刺激的だと思わせる部分があるかどうかだ。かつて、私が毎日新聞からロイター通信に転職した20年前、外国メディアにとっては、東京発海外へのニュースがいっぱいあると、競って東京に発信拠点を置き、記者も常駐させた。その後はデフレ状況が長く続く日本経済に魅力なし、ニュースバリューなしと、彼らは中国の上海や北京、さらにシンガポールに拠点を移してしまっている。

昨年の3.11の東日本大震災、その直後の東京電力の原発事故で、一時的に、彼らの日本発のニュース発信量が急増したが、その多くは東京に再び、拠点を移しての取材ではなく、どちらかといえば、上海や香港などからの臨時特派員の出張取材が多かった。

中國人観光客の日本のものづくり技術礼賛や
米国人夫婦の話はヒント
 この外国メディアの動きを見る限り、日本が外国人人材に対して、門戸を開放しても、日本を魅力ある国と思わないのだろうか、と心配になる。しかし、結論から先に言えば、それはNOだ。

最近のテレビ報道で、春節を利用して中国人観光客が日本を訪れた。原発事故によるリスクを懸念して一時、来日を見合わせる外国人観光客が多かったようだが、テレビ報道を見る限り、原発事故以前の状況に戻りつつある、と見える。面白かったのは、上海のニューリッチ、つまり新富裕層の人たちかどうかわからないが、東京で日本製の電気炊飯器を5つもまとめ買いし、「日本の製品は品質面でも素晴らしい。上海で日本製を買おうと思うと、高率関税で割高のため、東京で買うのだ」と。要は、日本のものづくり技術への強い信頼が言葉から感じられる。

もう1つは、最近、東京で出会った米国人夫婦のいい話だ。もともと日本好きもあって、日本国内をいろいろ旅行したあと、東京でたまたま話をする機会があったのだが、要は、日本のレストランはじめ、地方の温泉めぐりなどで、いわゆる誠意を感じさせるサービスが米国にも他の国にもない優れたもので、おもてなし文化は日本のソフトパワーだ、日本は成熟国家になっているが、経済成長で中国のように必死にならず、豊かな生活大国のモデル事例をつくればいいでないか、という話だった。何ともうれしくなる。要は、日本の戦略的な強みをアピールすればいいのに、というのだ。

外交官OB田中さん
「量を追い求める時代から、日本は衣替えを」
 2月8日付の毎日新聞の「世界の鼓動」欄で、外交官OBの日本総研国際戦略研究所長の田中均さんが、上海と京都の2つの都市を歩いた際に感じた経験をもとに、日本が今後歩むべき道をうまく描写しており、私の問題提起ともからむので、引用させていただこう。

「日本が規模で世界を席巻することは、もうあるまい。国内総生産(GDP)のみならず自動車や家電製品が世界市場でトップのシェアを持つこともないかもしれない。(中略)このまま、日本は衰退するのだろうか」と。

そして、田中さんは「私たちが忘れてならないのは、日本人の豊かな資質である。文化だけではなく、高品質な製品やサービスで、日本が他国に劣るとは到底、考えられない。(中略)日本は高品質国家として、強い競争力を有している」と。さらに続けて、「そろそろ、GDPの大きさや量を求める日本から、質を追求する本来の日本に衣替えするときが来たようである。(中略)熟成した文化と繊細な技量をもって世界に出ていく時期が来ているように、私は思えるのだが、、、」と。

冒頭の50年後の超人口減少社会の問題が議論になる場合、メディアを含めて、誰もがそのまま経済社会の衰退を、ただ何の手立てを打つこともなくじっと見守っているなどということは想像もしたくないし、あり得ないことだ。そういった意味で、政治が内向き志向のまま、ひたすら政争に明け暮れたりせず、また行政も自信喪失なのか、状況に流されることなく、日本の再生に向けての社会システムデザインづくり、新たな制度設計に立ち向かってほしい。メディアも、その延長線上で存在感のある仕事をしてほしい。

日本は世界の先例となる質の高い
ライフスタイル、ソフトパワー国家に
 そこで、私が問題提起したいのは、田中さんと同じ問題意識で、日本は、以前のコラムでも申し上げた、高齢社会に伴って起きる医療や年金、教育など社会インフラのさまざまな課題に関して、日本が率先して先進モデル例になるような制度設計を行い、胸を張って「課題克服先進国」と名乗れるように取り組みを行うこと、また米国人夫婦が評価した日本のおもてなし文化などサービスの質の高さ、高品質のものづくり技術に裏打ちされたライフスタイルの質の高さを追い求め、いわゆるソフトパワーとして体系化、システム化すること、さらに原発事故をきっかけに、エネルギーの新しい体系づくりを日本自身がやはり先進モデル例として打ち出すことーーなどだ。

情緒的だな、と思われたら心外だ。日本は、経済発展段階で言えば、成熟レベルに来ているが、いまは、日本は、GDPでひたすら経済覇権を競うどこかの国のような国とは違って、新たな経済社会のモデルづくりを行う時代に来ている。原発事故に限らないが、いわゆる供給先行型の企業成長パターン、量的な成長を追い求める時代から、間違いなく次のステップに来ている。

かつて大阪万博をきっかけに、日本の高度成長時代が幕開けし、さまざまな問題を抱え込むことになったが、昨年の中国の上海万博を見ても、中国はかつての大阪万博時の日本と同じように急速な都市化に伴うさまざまな問題を後追いするのだろうな。日本は、先を走った国として、先輩国として、課題克服の事例を示すことで、兄貴分としても対応することで、連携も進めればいいのだと思っている。その意味で、日本はソフトパワーを大きくアピールすればいいのだ。いかだろうか。

著者プロフィール

  • 牧野 義司
  • 1943年
  • 大阪府
  • 早稲田大学大学院

今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

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