M&Aの成功例・失敗例 シナジー効果を高める企業買収を成功に導く仲介者の信念
株式会社日本M&Aセンター
代表取締役社長
分林 保弘
マスコミでは敵対的買収ばかり取り上げられ、買収の99%を占めるという友好的買収には、ほとんど注目されていない。M&Aの最たるメリットはシナジー効果であるという、株式会社日本M&Aセンター 代表取締役社長(現代表取締役会長)・分林保弘が語る、M&Aの成功法則とは。買う側・買われる側双方の視点から探る。
蟹瀬だからM&Aという分野では割と先駆的な感じでしたね。
分林非常にやっぱり先駆的だったのですね。だから非常に伸びた会社なのですけども、私も生まれて初めて、1時間ほど、M&Aをしたことないのに講演させていただいたら、そしたらある会計士の方が私が壇上から降りてきたら「分林さん、よく勉強されましたね」なんて言われてホッとした覚えがあるのですけどね。
蟹瀬最初に成立させたM&Aってどういう会社だったのですか?
分林そうですね。婦人服の小売業で30店舗ぐらい持っておられたのです。ところが社長が亡くなりまして、息子さんが東大病院のドクターをされていたので後が継げないと。
蟹瀬継ぐ気がないと?
分林ええ。いう感じで困られていたので、これをあるメーカーの方に話をしたら、ぜひ、それやらせてほしいと。意外とこれはトントン拍子でやっぱり決まりましたよ。
蟹瀬じゃ、第1号はうまくいったということです。
分林非常にうまくいきましたね。
津島この後、分林さんは、日本M&Aセンターを上場させます。2006年、東証マザーズに上場します。2007年、全国225拠点を組織、東証一部に上場ということです。
蟹瀬これまでずっとお話伺ってくると、全てがトントン拍子できた感じが、おそらくテレビご覧になっている方もそうだと思うのですけど、そういう感じを受けられたと思うのですが、実際のところやってこられてうまくいかなかったケース、そういうのは当然おありですよね?
分林まあそうですね。でも意外と本当にごくまれくらいだと思います。私も今……。
蟹瀬うまくいかないときというのは何が原因なのですか?主に。
分林やっぱり売り手、買い手の方が、やっぱりお互いに謙虚であるということが私は絶対に必要だと思うのです。
蟹瀬売るほうは高く売りたい、買うほうは安く買いたい、それはありますよね?
分林はい。やっぱりそれをものすごく主張する人は、結果的にまとまってもうまくいかない。やっぱりお互いに、買う人は買わせていただくと、売る方は買っていただくと、いう謙虚さというのが絶対にお互いにやっぱり大事だと思いますよね。
蟹瀬だから頭で分かっていても、いざ商売となると厳しいところはあるのでしょうけど。
分林そうかもしれませんけどね。
蟹瀬一方の成功事例、具体的には?
分林成功事例というのは、やっぱりそういった本当の意味で売り手さんもそういった謙虚さが大事なのと、もう一つ私どもにとって大事なのはシナジー効果なのです。
蟹瀬両方ともよくなるという。
分林そうなんですよ。で、具体的には、例えば中小企業で非常にいい技術を持っているのだけども、販売力がないとか資本力がないとかいった場合に、中堅とか上場会社のほうで、うちは販売力と資本力はあるから、この技術を生かして2倍3倍にしてみようと、こういったケースが非常にやっぱりシナジー効果があって。
蟹瀬具体的にはどういうのがありましたですか?
分林例えば、最近でもある人が息子さんが2人いたでのす。
それで、この方は非常に面白い方で、ご家族はニュージーランドに住んでおられまして、ご本人は東京で社長……会社をされていたのですけど、高級マンションの賃貸管理業だったのですね。ところが息子さんが大学を出られて、1人は映画監督になりたいと。で、もう1人は医学部に滑ったら会社を継がせようと。しかし受かってしまったのです。
蟹瀬じゃあお医者さんの道へ行ってしまうと。
分林そうなんですよ。じゃあ売ろうということになりまして、私の友達は非常に15万戸ぐらい管理している日本でもかなり大手のマンションの管理会社なのですけども、そこはやっぱり家賃が2、3万から30万ぐらいの、どっちかっていうと普通のマンション管理の会社をしていたのです。そういった100万とか200万のものは自分のところでつくろうと思っても、なかなかできなかったらしいのですが、そこに買っていただいたら、1年あまりで売り上げが3倍にまでやっぱり増やすことができました。
蟹瀬それはやっぱりハイエンドからローエンドまでマーケット全体を網羅できたわけですからね。
分林もう全部やっぱりできると。で、社員の方も全員が残って、その会社がどんどん伸びていくと、非常に最近の事例なんかでも非常に記憶に残る例ですよね。
蟹瀬日本M&Aセンターに来るお客さんというのは、企業としてはどういう企業が多いのですか? 規模もあるでしょうけど。
分林大体、ほとんど私どもは、事業承継関係ですから、要するに後継者がいないということで迷ってこられる方が多いのです。一つは子供がいない。子供が継がない、それから子供がやっぱり経営者には向かないと。
蟹瀬規模でいうと、中小というカテゴリーですか?
分林大体、年商でいうと2、3億から50億ぐらいで、最近、上場してからは100億、200〜300億というような会社も結構来てられるのですけども、私どもはとにかく北海道から沖縄まで一切地域は問わないと。
蟹瀬事業としては、だから成功はしている事業なのですよね? 要するに黒字企業が多いわけですか?
分林そうなんですよ。基本的には90パーセント以上が黒字企業で、どうしても駄目な場合は法的整理、民事再生をかけたりとか、そういった企業再生の分野もやっていますから、そういった相談も乗るし、今日来たお客さんなんかは数年後に上場したいんで、それを手伝ってほしいと、大手とはむしろ組んでも構わないというようなお客さんもおられますし。
蟹瀬分林さんとしては、しかし中小のところに思い入れがおありだというふうに伺っていますけどね。
分林やっぱり僕は中小企業のほうが好きなのですよ。やっぱり中小企業の方というのは、やっぱりわれわれは相談に乗ることによって、その方の人生も変わるし、その社員の方の人生も全て変わりますから、やっぱり僕は中小企業のわれわれの会社の理念っていうのは企業の存続と発展に貢献するというのを企業理念にしているんですが、これは会社の理念であると同時に私自身のライフワークだと思っています。
蟹瀬なるほどですね。やっぱり企業だけじゃなくて、そこにいる人たち、このかたがたの人生も一緒にずっとご覧になってきているということですよね?
分林やっぱり全部がプラスになってほしいと。だから売った方も、それから買われた方も、特にその社員とその家族の方も幸せになってもらいたいという、やっぱりそういう信念に基づいてやっていますよね。
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