手の平の銀行、を実現した顧客中心主義がつくる!想像を超える仕組みとは
株式会社じぶん銀行
代表取締役社長
柏木 英一
2008年、KDDIと三菱UFJ銀行の共同出資で、モバイルに特化した銀行として設立された「じぶん銀行」。人工知能を活用するなど、新たなサービスの開発、独自性のあるビジネスモデルを展開。じぶん銀行を牽引(けんいん)する代表取締役社長の柏木英一が、「手のひらの銀行」を実現するなかで貫いてきた、「顧客中心主義」と「デジタルエブリシング」がたぐり寄せる未来とは。銀行という言葉からは想像がつかない、既成概念を超えた「仕組み」が社会を変えつつある。
坪井スマートフォン一つで手軽にいろいろなサービスを受けられることは分かったのですが、手軽さゆえにセキュリティ面が気になります。何か対策などはされているのでしょうか?
柏木おっしゃる通り、セキュリティが一番大事だと思います。たとえば、「スマホ認証」というものを取りいれています。難しい話なのですが、「トランザクション認証」とも言うのですけれども、振込をする際に、振込の内容や金額や相手先を使って、ワンタイムパスワードというものを生成して、お客様のスマホとじぶん銀行のシステムの間に裏で自動的に認証しているんですね。
たとえば、本当は蟹瀬さんに振り込もうとしているんですけれども、悪い人がハッキングしてどこか違う人に送ろうと思っても、そのパスワードが変わってしまうので、そこは振込ができないといったセキュリティをしています。
それから、いくつかあるのですが、「ATMロック機能」や「インターネットバンキングロック機能」というものがあります。これは戸締りをしっかりやりたいというお客様がいらっしゃいますので、そういうお客様向けにスマホ上でATMをロックしておくことができます。インターネットバンキングやATMに第三者がアクセスすることを防ぐことができます。
蟹瀬このセキュリティの分野というのはおそらく金融機関、どこでも本当に頭の痛い世界だと思うのですが。
柏木そうですね。そういう意味では、我々は非常に優位な立場にあります。一つは三菱UFJ銀行という日本を代表する金融機関、彼らもセキュリティはしっかりしています。それから、KDDIという通信業の雄が親銀行ですので、そこからグローバルな情報をいち早く入手して対応していくことが可能になる、これも我々の一つの利点だと思っています。
蟹瀬今後の銀行の業務形態もだんだん変わってくるでしょうし、金融業界そのものはどういうふうに変わってくるのでしょうか?
柏木金融は今、本当に大きな変革期。私は数十年に一度だと思っていますが、そういう変革期に来ていると思います。その一つの大きな要因は「デジタル化」だと考えています。フィンテックという言葉、ファイナンスとテクノロジーですが、フィンテックによって、今、いろいろなプレーヤーが金融に入ってきています。
柏木今、起きているのはたとえば、eコマースをやりつつ金融もやるということで、以前であれば、「銀行がワンストップショップで全部やります」ということだったのですが……。
蟹瀬コンビニエンスストアが金融に入ってきたり、それから楽天やAmazon(アマゾン)、そういうものが金融テクノロジーのサイドから、金融に入ってくるということですね。
柏木おそらく今の銀行の姿は将来、デジタル化によって大きく変わっていくのは間違いないと思っています。
柏木その中でも変わらないものが一つあります。やはりお客様の立場に立って、お客様がどういうふうに使いたいのかということを考えていかないといけないと思っています。
たとえばモノを買いたいお客様がいらっしゃいますが、決済をやりたいわけではなくて、あるいはローンを借りたいわけではなくて、決済をやったり、ローンを借りるというのは何かモノを買いたい、サービスを受けたいと思っていて、それに必要だから、決済やローンが必要になってくるということだと思っています。
ですので、銀行の論理で決済やローンを考えるのではなくて、お客様がどういうニーズを持ってやっているのかということからすると、銀行というのはもっと……、私「フリクションレス」と言っているのですが、摩擦がない世界、あるいはシームレスだとか、インビジブルという人もいるのですが、銀行自体が見えなくなるかもしれません。
柏木いつの間にか銀行のサービスをお客様が受けられるような世界になっていくのではないかと思っています。
蟹瀬ユーザーフレンドリーにという方向なのですかね?
柏木だと思います。
蟹瀬それが半歩でも一歩でも他行より先に進んだほうが、よりマーケットでの生存が可能になってくる。
柏木おっしゃる通りです。
蟹瀬じぶん銀行としてはどの辺りが自分の生存につながるのですかね?
柏木スピーディーに良いサービスを提供するためには、その強みを持った方と一緒に「オープンイノベーション」をやっていくということが非常に大事だと思っています。
柏木従来日本の銀行というのは海外とは違って、ITはアウトソースすることが多かったのですが、アウトソースというのはシステムの開発を外にお願いする形ですが、それとはまったく違う形の「オープンイノベーション」というのは、対等な立場でお互いの知見をぶつけて、イノベーションを起こすということで、これは非常にメリットがある方法だと思います。我々は実は、「AI外貨自動積立」というものを出しまして、これがまたヒット商品になっています。外貨の積み立ては昔からあるのですが、これは月のうち月初に積み立てたいとか、月末に積み立てたい、これをお客様がご指定できます。
「AI外貨自動積立」というのは、AIがお客様にとって一番有利になる可能性がある日を選んで判断して、その日に積み立てる。為替は変動していますので……。
これはじぶん銀行だけではできないんですね。ディープラーニングに力を持った、これはスタートアップなのですが、Alpaca Japan(アルパカジャパン)という会社と組んで、このサービスを提供し始めました。
じぶん銀行と共同でサービスの開発を行っているAlpaca Japan株式会社 Head of Japan R&D 北山朝也さんに、「オープンイノベーション」についてお話を聞いた。
北山我々自身は「こういう技術がありますよ」ということはご提案できるのですが、それをどういうふうにお届けすればよいかということに関しては素人なわけです。そこに関しては逆に「こういう見せ方をしましょう」「こういうふうに使いましょう」ということを一から議論することができました。
そういう意味では本当に我々にとっては、自分たちの技術をお客様にどう届けるかというところに関して、お互い一緒に汗をかいて考えてきたから、我々自身の成長という点でもすごいメリットがありました。
こちらは人工知能を使い、じぶん銀行とAlpaca Japanが共同開発した「AI外貨自動積立」。この共同開発はスタートアップ企業のAlpaca Japanにとって、大きなチャンスになったという。
北山何万人、何十万人もいるユーザー様に、我々のディープラーニングを使ったエンジンが今や、銀行の基幹システムで動いている、ということを2年前の僕らが知ったら到底、信じられないと思います。でも、それが動いたことは本当に感無量ですね。
坪井実際に共同開発をされているなかで、メリット、良さはどのようなところに感じられますか?
柏木これは 1 + 1 が 2 ではなくて、それ以上になることなのです。
柏木じぶん銀行は金融について知見を持っています。そして、Alpaca Japanさんはディープラーニングについて知見を持っています。ということで、全然違う分野の人たちが一緒にコラボレーションをすることによって、本当に良いイノベーションが生まれるということです。
蟹瀬これはまさにシナジー効果(相乗効果)が起きるということですね。
柏木おっしゃる通りです。
様々なサービスを追求するだけではなく、利用者が何を望んでいるかを徹底的に考え、新しいことにチャレンジし続ける。それが、じぶん銀行がこれからも歩む道。
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