想定外リスクを常に想定する時代に 2016年は波乱含みで先が読めず


時代刺激人 Vol. 280

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

「想定外を想定する」。一瞬、何のことかと思われるかもしれない。正確に申し上げれば、想定外のリスクを常に想定して行動せざるを得ない時代に入った、ということだ。言葉の遊びで申し上げているのではない。

ユーラシアグループが指摘する最大リスクは
2年続けて欧州の閉鎖性・脆弱性

ユーラシアグループは、代表ブレマー氏の問題意識を補う形で、2016年の10大リスクに関して、1) 欧米間の同盟関係の空洞化 2) 欧州の閉鎖性・脆弱性 3) アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立などで影響力を強める中国 4) ISによるテロの脅威 5) サウジアラビア 6) 科学技術者の興隆 7) 予測できない指導者たち 8) ブラジル 9) 十分でない選挙 10) トルコを挙げている。
ちなみに同じユーラシアグループが前年2015年に挙げた世界の10大リスクでは、トップは欧州政治の弱体化、2位が欧米と対立を深めるロシアで、続いて3)中国経済減速の波及 4)米国がならず者国家への制裁を金融で兵器化 5) 広がる「イスラム国」の脅威 6) 新興国指導者の求心力低下 7) 政府の企業への影響力拡大 8) サウジアラビアとイランの対立 9) 中国と台湾の関係悪化 10) トルコが失政で混迷などだ。

 

これで見る限りブレマー氏やユーラシアグループは、2015年、2016年と終始、欧州政治を最大のリスクと捉えている。とくに、欧州内部で英国が中国と急接近、フランスは対ISテロ対策のからみでロシアと、またドイツは移民対策などでトルコと、それぞれがバラバラに関係を深める結果、ウクライナ問題などを含めたロシアとの関係では米国との同盟関係が空洞化してしまうことを重大リスクと考えているようだ。

ブレマー氏は「独立する米国」(国内回帰)で
新たなリスクに臨めとの主張

こうした中で、米国はいったいどういった動きに出るのだろうか、という点が気になる。地政学の専門家、ブレマー氏は自著「スーパーパワー・Gゼロ時代のアメリカの選択」の中で、米国がとるべき道としてグローバル世界への積極関与(必要不可欠な米国)、限定関与(マネーボール米国)、国内回帰(独立する米国)という3つがあり、自身としては独立する米国がめざす方向だ、と述べている。
具体的には、それ自体は決して米国の孤立主義ではなく、むしろ米国が世界のすべての問題に関して責任や使命感を持って行動することとは一線を画し、どちらかと言えば独立し米国自身の安全確保に自らが注力する。端的には、米国の持つイノベーション力に磨きをかけ、米国内のインフラ、教育、医療、産業などに対する積極投資を行って米国が世界の模範国家となることをめざすべきだ、というのだ。

日本は「想定外」を含めあらゆるリスクに
先手で対応できる態勢で臨むしかない?

ブレマー氏は、脆弱化が進む欧州、独自の重商主義路線を歩む中国やロシア、また過激派組織ISのテロ行為などへの対応に関しては、米国と利害がからむ場合には積極的にコミットすべきだが、不必要に巻き込まれる必要はない。むしろ、米国自身が独自のモデル国家をつくればいいのだ、ということのようだ。

 

さて、冒頭に問題提起した「想定外のリスクを想定する」という問題とどうリンクさせて考えるべきだろうか。リスクは際限なく存在するが、日本としても、想定外を含めあらゆるリスクに先手で対応できる態勢で臨むしかない、と言えそうだ。いかがだろうか。

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