円安は今や異常レベル、日本の国力低下につながる


時代刺激人 Vol. 320

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。
2022/7/25

実質実効レート50年ぶり低水準、対外購買力もダウン

日本の対外経済活動の重要な目安となる円の対米国ドルレートは最近、急ピッチで円安が続き、何と1ドル140円目前のレベルにある。円の実質実効為替レートという、物価動向勘案後の主要貿易相手国に対する円の実質的な価値で見た場合、現在の為替レベルは1972年以来の低水準で、50年ぶりの円安になる。しかも過去20年間の下落率が41.1%。この下落率は通貨安で問題を抱えるアルゼンチン、トルコよりも下位になる、という。

そればかりでない。IMF(国際通貨基金)が推計した2022年の購買力平価は91.15円。現在の円安レベルは、50%も割安になる計算。東短リサーチ代表の加藤出さんは「1980年代まで振り返って、一度も経験したことがない円の弱さだ。日本の対外的購買力は著しく低下しており深刻」と述べている。日本の国力低下につながる円安と言って間違いでない。
為替レートは、さまざまな要因で変動する。そのこと自体に一喜一憂していても始まらないのは事実。しかし、ここまでの歴史的レベルの円安に至ったのは、金融政策対応のまずさ、エネルギー自給対策に十分手を付けず国際原油市場にまかせた結果の貿易赤字増大などが響いた。通貨安がもたらす国力低下は重大だ。この際、抜本対策を考える必要がある。

日米金融政策の食い違いで金利差拡大し円安を誘発

まず金融政策だ。日米の政策に大きな食い違いが生じたことで金利差が起き、今回のドル高・円安を生み出した。具体的には、米国FRB(連邦準備制度理事会)が自国インフレ抑制のため金融引き締めに転じ、政策金利を連続的に引き上げた。これに対し日本銀行(以下日銀)は、30年間続くバブル崩壊後の長期経済停滞・デフレの脱却を優先課題にしているうえ、2%物価上昇の実現をめざして2013年から異次元の超金融緩和政策を続け、今も変えていない。このため、米FRB金利引き上げのたびに日米の金利差が広がり、ドル買い・円売りの形で円安に拍車がかかってしまう。日銀は、まさに政策ジレンマに陥って、身動きがとれない状況だ。この点は、看過できない。

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