横浜の杭打ちミス問題はまだ未決着 元請け建設企業の責任が依然あいまい


時代刺激人 Vol. 281

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

 「信じがたい」「なぜそんなことが」といった事故が最近、日本国内のみならず世界中いたる所で起きている。その多くは、ヒューマンファクターなど人災によるものだが、同時に組織エラー、端的には社会の安全や人命の安全を二の次に、目先の利益を最優先にする誤った企業の行動、あるいは大組織病が関係する組織エラーがそこに潜む。

「信じがたい」「なぜそんなことが」といった事故が最近、日本国内のみならず世界中いたる所で起きている。その多くは、ヒューマンファクターなど人災によるものだが、同時に組織エラー、端的には社会の安全や人命の安全を二の次に、目先の利益を最優先にする誤った企業の行動、あるいは大組織病が関係する組織エラーがそこに潜む。

こわいのは手抜き工事による人災、
台湾での高層ビル崩壊事故は組織エラー

今年2月6日に台湾の台南市を襲った地震で16階建て高層ビルが一気に崩壊した事故は、まさに人災典型例で、しかも組織エラーだった。現地報道では強烈な地震の揺れから10秒後にビルが崩れ落ち始めた。そして住民は逃げる間もなく閉じ込められ、最終的に116人が犠牲になった。当局がチェックしたら、その高層ビルには支えとなるべき鉄筋が十分に入っておらず、建設会社の悪質な手抜き工事が原因だ、とわかったためだ。

 

地震による台湾全体の死者数の98%がこの崩壊事故に集中しており、建設に携わった企業に重大な責任がある。なぜ社会の生命安全などを二の次に利益最優先の企業行動に出たのか、台湾当局は徹底解明し、再発防止につなげるためにも厳罰処分すべきだろう。

成熟社会国家日本のキーワードは安全確保、
横浜杭打ちミスでの企業対応に問題

さて、本題だ。さすがに日本では台湾のような悪質事例はない。しかし昨年10月に問題が表面化して大騒ぎになった横浜のマンション杭打ちミス問題は、成熟社会国家日本にとって今やキーワードの安全確保という点で、看過できない事例だ。
というのも住民サイドからのマンション傾き異変の発見、通報に対し大企業側は当初、東日本大震災の影響だと冷ややかだったが、独自調査した自治体の問題指摘でやっと動きだし、本格調査したら意外な杭打ちミスが判明した。結果的に大惨事に至らなかったが、私は、この初期対応を含め大企業の対応に依然として問題が残っていると考えている。

 

結論から先に申し上げよう。監督官庁の国土交通省が事態を重視し今年1月13日に、元請けの三井住友建設、第1次下請けの日立ハイテクノロジーズ、第2次下請けの旭化成建材3社に対し行政処分を下した。しかしそれは行政サイドの問題であって、肝心の関係企業、とくに元請けの大企業を軸に再発防止策が十分にとられたとは到底、思えない。現時点では第2次下請けの旭化成建材、親会社の旭化成が再発防止策に踏み込んだだけだ。

元受け三井住友建設が主導し、
独立専門家の第3者委に調査と再発防止策依頼を

そこで、私はこの際、元請け企業の三井住友建設が主導し第1次下請けの日立ハイテクノロジーズ、第2次下請けの旭化成建材の2社と共同で、外部の独立した公正かつ専門的な第3者に克明な原因解明調査を依頼し、土木建設の元請け・下請けシステムの在り方、そして再発防止策を提案してもらうようにすべきだ、と考える。

 

いま大事なのは、関係した大企業、とくに建設の元請け企業の三井住友建設が、プロジェクトの中軸にある企業として、まずは率先してリーダーシップをとり、下請け企業を統括、管理・監督するにあたって下請けシステムのどこに問題があったのか、たとえば杭打ちデータ偽装などを避けるために仮に「見える化」システムを導入するとしたらどういった方法がベストか、問題個所が見つかった場合、誰が中心になって問題処理、対策を講じるのか、といったことに関して、元請け企業としての積極姿勢を示すことだ。

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