安全運転経営でデジタル革命時代を乗り切れるか


時代刺激人 Vol. 307

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

ある大手企業の驚くべき現実‼

こういった話に水を差すような事例を新たに持ち出して恐縮だが、最近聞いたある大手企業の「現実」をお伝えしよう。株式会社リクルートから、そこへ転出した人の話だから間違いない。その大手企業の名前を聞いて驚いたが、何と若手に対し「指示されたことを巧みにこなし実績をあげれば十分。妙な問題意識を持つ必要はない」と言っているのだ。早い話が、イノベーションを促す『出る杭は打たれろ』ではなく、まずは、その企業のコアビジネスに添った行動をしろ、余計なことはするなというわけだ。

「面白いアイディアはないか」と問うチャレンジ精神がベースのリクルートと180度異なり、とまどったそうだ。その企業文化を変えるため、いまチャレンジ中、という。とはいえ、この大企業の経営手法は驚きだ。若者のチャレンジを抑え込み、組織のカラーに染め上げる発想が理解しがたい。

目先の利益確保や株価対策では限界

以前、企業の幹部の方々と企業経営の在り方を議論交流したことがある。
結論から先に申し上げよう。どの企業も、時代を画する新たなイノベーションによって企業価値を高めたい、と思っていることは間違いない。しかし「巨大装置産業」の話のように、企業組織が肥大化していくと、企業リーダーは、大きなリスクをとれば組織にひび割れを起こし経営基盤が揺るぎかねないと、安全運転経営に終始する、というのだ。

そればかりでない。ある企業幹部は「経営者にとっては連結ベースの売上高、経常利益とも一定水準以上に維持するのが至上命題。それがうまくいかないと東芝経営陣が陥った粉飾まがいの経営数字づくりに動く。さらには利益剰余金を貯め込むことに躍起となり、投資に回すよりも自社株買いで株価押し上げにつぎ込むケースもある」という。多くの企業がすべてこうだとは思わないが、重い経営任務を背負う企業リーダーが保身あるいは安全運転経営に走っていては、とてもデジタル革命対処どころではない、といえる。

日清紡社長の新入社員への強烈な訓示

私の友人から聞いた「すごい話」を紹介しよう。その友人の親戚が1960年代に日清紡に入社した際、当時の桜田武社長が新入社員への訓示で「君たちは、花形産業の紡績会社に入っただろうと思っているだろうが、この業界は間違いなく衰退する。従って、君たちがこれからやらねばならないことは、日清紡という会社をいかにして紡績業から脱出させるかだ」と述べ、度肝を抜かれた、という。

その日清紡はいま、東京証券取引所での産業分類は繊維ではなく電機だ。エレクトロニクス事業と自動車のブレーキ事業が売上高の70%を占めるからだ。デジタル革命を予見して化粧品や医薬品で「第2の創業」を実現した富士フイルムと同じ足取りだ。

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