時代刺激人 Vol. 324
牧野 義司まきの よしじ
1943年大阪府生まれ。
和食世界は片道の世代間交流、でもミシュラン格付けトップ
シニアと若者の世代間交流に関連して最近、レストランなど外食産業の人たちと話し合っていて「いい話だな」と感じたことがある。それは、フランス・ミシュランタイヤの世界主要都市レストラン・飲食店格付けで、ミシュラン3つ星の高い評価を得ている和食の店で、シニアの調理師から秘かに調理技術を体得した若い調理人が、独自センスで和食メニューを開発し、かなりの高評価を得ている、という。この結果、東京は3つ星店12、2つ星店39、1つ星店149の200店に及び、第2位パリを引き離し世界トップの座になった。
一昔前ならば、若い調理人は、調理の際の包丁さばきの技術にとどまらず、食材の選び方、味付けの工夫、メニュー開発などに関しては親方ともいえる先輩調理人から、いっさい教えてもらえず、「先輩の仕草、調理手法を見て、技術を盗め」と言われた。現に、その実践を通じて、一人前となり、独立して自身の料理を売り物にする店を出したケースは多い、という。和食の世代間交流は、特殊な職人の世界だけに片道交通だが、それでも若い調理人たちは独自センスでメニュー開発し、顧客評価を得ているのだからすごい。頼もしい限りだ。
楡周平氏が小説「限界国家」で意外やネガティブ未来
ところが、そんな話に水をさしかねない近未来小説が最近、出てきた。社会性ある経済小説で定評の楡周平氏が、日本の2、30年先の経済社会を描いた「限界国家」という本で、意外にもネガティブな近未来世界を描いた。人口減少で医療現場は患者数が減っていく一方で、医薬技術の向上によって健康な人が増えるため、医療需要低下で医療現場が衰退しかねない。そこで医療サイドは、血糖値や血圧の数値に関して、健康レベルの基準値を下げ、あえて要治療の患者数を増やす、要はわざと病人をつくることで対応する、というのだ。
近未来小説で描く架空の話なので、まじめに受け止める必要はないが、何とも驚きの発想だ。私ならば、高齢化が進む新興アジアの国々に対し、今後は日本の医療の主力を少しずつ移し、アジア成長センターで現場対応する、というストーリー展開をする。現に、大手商社の三井物産は、新興アジアで生活習慣病が増え、予防医療のみならず治療や在宅医療ケアなどのスムーズ提供ニーズが高まる、との判断から、日本の医療施設と新興アジアの病院などとの連携を進め、事業展開する計画でいる。重要なチャレンジだ。
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