時代刺激人 Vol. 325
牧野 義司まきの よしじ
1943年大阪府生まれ。
特別調査委が月1回の取締役会を要求、十分に開催しない証拠
それだけでない。息子宏一副社長はなかなかのやり手で、ここ数年、創業社長の父親に代わって、実験を握っていたという。その宏一氏は、経営学修士(MBA)資格を持っていた、というが、企業ガバナンスに関して、いったい何を学んだのか、ぜひ知りたい点だ。ところが辞任会見には姿を見せなかった。責任追及を回避して雲隠れしたのは見え見えだ。
BMに企業ガバナンスが働いていないと実感したのは、特別調査委報告で、取締役会機能を徹底すべく毎月1回、全役員参加の取締役会の開催を求めたこと、さらに社外取締役を迎え入れて外部の評価や意見を求めたことだ。BM経営陣が取締役会を十分に開催していなかった、ということだが、ピーク時に6000人社員がいた企業組織とは、とても思えない。
BMのHPに経営理念やガバナンス記述がゼロなのは驚き
BMに企業ガバナンスが機能していない、と思ったことがまだある。インターネット上のホームページの会社概要を見たところ、経営理念はじめ企業ガバナンスにかかわる記述がどこを探しても見当たらないのだ。非上場のオーナー企業によくある「ワンマン経営」の悪い面が出ていて、経営トップに忠誠を誓って行動すればいい、ということなのだろうか。
BMは、創業経営者が引責辞任で交代した後も、苦境が続く中で、大手商社の伊藤忠商事が事業継承に名乗りを上げた。伊藤忠商事は、中古車販売市場にまだビジネスチャンスあり、とみて資産査定中のようだが、その場合、企業ガバナンスの枠組みづくりを期待したい。
BM経営の悪質ぶりを黙認した?損保大手にも責任
ここで、ぜひ指摘しておきたい問題がある。BM問題での損保ジャパンを含めた大手損保の存在だ。BMは、金融庁から損保代理店業務登録取り消し処分を受けるまで、自賠責保険を取り扱い、手数料収入が年間200億円にのぼっていた。損保ジャパンを含め損保大手各社にとって、BMは自賠責保険がらみで手数料を稼いでくれる「優良取引先」だった。
中でも、損保ジャパンはBMからの人材派遣要請に応じるなど、関係強化を図っていた。それだけに、保険金水増し請求の行為に気がつく機会は十分にある、場合によっては黙認する結果になっていたのでないか、との懸念もある。この点に関し、損保ジャパンは「保険料稼ぎのために保険金不正請求を黙認したなど、断じてあり得ない」と否定している。
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