経験無用!?「過去の経験が全く生きない」時代の先見性


慶応義塾大学
政策・メディア研究科 特別招聘教授
夏野 剛

特選インタビュー

「個人の能力が最大化できる時代になった」。i-mode、おサイフケータイなどの誰もが知るサービスを立ち上げ、ニコニコ動画を仕掛けるなどさまざまな展開を図り、大学でも教壇に立つIT業界のカリスマはいかに旧来モデルを打ち破ったのか、そして今後をどう見据えているのか?

蟹瀬どうもはじめましてなんですけど、Twitterで時々お話してまして。

夏野初めてという感じがしませんね。

白石早速なんですが、本日は「ニッポン元気化戦略」を象徴する3つの言葉で進行させていただきます。まず最初の言葉は何でしょうか?

夏野「スティーブ・ジョブズ」です。

蟹瀬Apple創業者ですね。どんなお話か楽しみですね。

夏野剛は1965年神奈川県に生まれる。1988年早稲田大学政治経済学部を卒業。同年東京ガスに入社。1995年ペンシルべニア大学経営大学院ウォートンを卒業。その後ベンチャー企業副社長を経て1997年NTTドコモに入社。1999年i-mode、おサイフケータイなどのサービスを立ち上げる。2008年NTTドコモを退社。現在、複数社の経営に携わりながら慶応技術大学 政策メディア研究科 特別招聘教授として活動している。

白石夏野さんといえば、i-mode、おサイフケータイ、ニコニコ動画の仕掛人として有名ですが。

蟹瀬若者の間ではカリスマ的存在。若者だけじゃないですね、経営者の間でもカリスマ。

夏野年代によって僕のことを違う風に見ますね。例えば今20代の方ですと、i-modeとか古いものなので、ニコ動の人として見てるし。経営者の方は携帯業界で生きてきた人と見るし、非常に年代によって見られ方が違うのがうれしいです。

蟹瀬色々な顔があります。その一つが教育者ですから。

白石慶応義塾大学で教授をされているということで、どういった科目を教えられているんですか?

夏野僕は学部生からマスター、大学院生まで全員に対して提供しているのは、ネットワーク産業論という授業です。ここ過去30年、40年、日本の特に製造業を中心とした大企業は、R&D研究開発投資というものに非常に敏感に戦略的に投資をしてきました。これは、なぜかというと企業の競争力の源泉の一つがこの技術開発力であって、この技術開発を自社ですることが自分たちの競争力をあげることになるという信念に基づいていたからです。

これが、この10年間でガラッと変わってしまったのが、IT革命によってもたらされた変化です。これは、インターネットが日本の産業、社会システムにいったいどういうインパクトを与えたのかというのを一学期間かけて、データを見ながら、このデータはどういう風に見ていくんだよ、と一緒に議論していくような授業です。

蟹瀬学生さんの反応はどうですか?

夏野インタラクティブにやる授業なので、自分たちの親しみのある話をあえて多くしているので、すごく反応が良いと思います。

蟹瀬結構興味を惹かれると思いますね。私も一応大学教授をやっているものですから。

夏野面白いのは、今の学生はコンピューターは当たり前のものですし、スマートフォンや色々なものを持っているので、知識を伝達するような授業をしても、下手をすれば学生の方がよく知っているんですよね。

蟹瀬Googleとかでキーワードをパッと入れたら、全部出てきちゃうから。

夏野特に私の教えているキャンパスは、とにかく全ての机に電源がついていて、Wi-Fiが繋がっているので、全学生がパソコンを開いてやっているのでやりにくいですよ。視線がこっち来ないんですよ。そういうところで、なるべく知識の伝達とか、知識をただ教えるということではない、何かを得て、何かを考えてもらおうという授業をやっています。

蟹瀬言ってみればIT、インターネットが中心になるんですが、このインパクトは大きいですよね。社会をどういう風に変えたという感じなんですか?

夏野この15年間に何が起きたかというと、ちょっと振り返ってみていただくと、実はビジネスのやり方が根本的に全部変わっています。例えば航空会社。今は国内線の個人顧客の70%がウェブなんです。

蟹瀬僕もです。

夏野普通ですよね。でも、これ14年前に始まったことなんです。だから、この15年間で航空会社のお金を稼ぐビジネスモデルがゴロッと変わっちゃった。

蟹瀬社員の人と会社の関係、上下関係も変わりましたよね。

夏野特に組織と個人の関係が圧倒的に変わりました。検索をすれば何の情報も出てきます。例えば、山中先生のノーベル賞の論文早くからウェブ上で公開されてました。普通はそういう最先端の論文を手に入れるのは難しかった。今、全部出てるんです。
そうなると、組織にいなければ手に入らない情報がほとんどないんです。一方で、ソーシャルメディアがでてきました。組織にいるからこそ発信できる情報が昔はあったんですね。例えばテレビに出てる人だけが伝えられる。ところが、今例えばTwitterで、僕の場合12万人の人がフォローしてますから。12万人の人に向けてくだらないことも呟いてますけど。

出演者情報

  • 夏野 剛
  • 1965年
  • 神奈川県
  • 早稲田大学

企業情報

  • 慶応義塾大学
  • 放送日 2012.12.02

関連コンテンツ

運営会社

株式会社矢動丸プロジェクト
https://yadoumaru.co.jp

東京本社
〒104-0061 東京都中央区銀座6-2-1
Daiwa銀座ビル8F
TEL:03-6215-8088
FAX:03-6215-8089
google map

大阪本社
〒530-0001 大阪市北区梅田1-11-4
大阪駅前第4ビル23F
TEL:06-6346-5501
FAX:06-6346-5502
google map

JASRAC許諾番号
9011771002Y45040