経験無用!?「過去の経験が全く生きない」時代の先見性
慶応義塾大学
政策・メディア研究科 特別招聘教授
夏野 剛
「個人の能力が最大化できる時代になった」。i-mode、おサイフケータイなどの誰もが知るサービスを立ち上げ、ニコニコ動画を仕掛けるなどさまざまな展開を図り、大学でも教壇に立つIT業界のカリスマはいかに旧来モデルを打ち破ったのか、そして今後をどう見据えているのか?
蟹瀬よく言われるのが、教壇に立ってて、最近の若者はどう思いますかって。定番の質問でしょ? これを聞かれたとき、どう答えますか?
夏野少なくとも、僕の時代よりはるかにレベルが高いです。
蟹瀬何のレベルですか? アカデミックなレベルですか?
夏野学生ですから、学部生にアカデミックなレベルは期待しても無駄ですね。
蟹瀬公にも私は学部長の立場からは言えません(笑)
夏野多様性に対する理解です。人間の幅を広げているのは多様性なんですけど、今の学生はファッションがバラバラ。音楽の趣味もバラバラ。やっているスポーツもバラバラ。しかもマイナースポーツがたくさんあります。すごく多様性に富んでいて。
たとえば英語なんかも、帰国子女がたくさんいるので、その人に英語がかなうわけがないので、「あいつがやるんだったら、俺も」っていうそういうこと考えないんですよ。井の中の蛙的な競争意識は全くなくて、自分がこれが趣味だと思ったらそこに突っ込んでいきます。クラスにそういう趣味の人間がいなくても全く怖くないんです。インターネットでつながっていれば。つまり多様性を最初から受け入れている世代なんです。これは日本に最も欠けていることを補ってくれるのが、今の世代です。
蟹瀬新しいアイデアの遡上というか、基盤ができていますね。
夏野否定しないんです。サッカーでマンチェスター・ユナイテッドでシュートを決める日本人が出てくると思ってました?
蟹瀬信じられないですよね。
夏野フィギュアスケートの女子選手が世界選手権で優勝する時代なんて僕は自分の生きている時代に来るとは思わなかったです。大リーガーで10勝以上あげる投手が続々と出るなんて。スポーツの世界は若いころに成果が出やすいのでもう出てますけど。15年後には経営の世界ですごい、今の20歳、25歳くらいの若手出身のすごい経営者が出てくると思います。
蟹瀬ニッポン元気化戦略のキーワード、親のスネはかじれ。
夏野しかし、今の若者の最大のハンディキャップは何かと言うと、社会の構造そのものが上に優しく、下に厳しい構造になっているんですね。これは年金の制度とか法的の仕組みもそうですが、大企業なんかもそうです。今は50代以上の雇用を確保するために、新卒の雇用を制限してますから。これは経営者として一番やっちゃいけないこと。将来を捨てて、ゴーイングコンサーンとして、起業マネジメントに最も大事なことは、続く企業を作る事なのに、自分の任期が終わった後を心配していない経営者が多すぎるんですね。
これがハンディとして若者にのしかかってくる。しかも、チャンスが非常に少ないんですよ、今の若者は。ここでまず大学の卒業の時の新卒一括採用の波に乗れないとニートとかフリータ―といわれますから。
蟹瀬セカンドチャンスが見えてこないですもんね。
夏野それはおかしいですよね。となると、僕はその恵まれた親の世代のスネをかじってその代わり、何かを極めろということです。かじって遊んでちゃだめですよ。
蟹瀬半分は納得しましたね。半分はなんとか自立をしてもらいたいと思いますし。
夏野ここは社会投資だと思うんですよ。つまり、社会制度として若者にチャンスが少ない分、ちょうど親子関係になっているんです。50代の方、60代の方の下の方が就職難であえいでいる。結局、家庭内所得移転が起こっているだけです。
蟹瀬世代間格差と呼ばれるわけですね。
夏野ところが世帯で見ると、格差はないんです。ただ問題は、少子化とか、自立できないのは問題なので、社会的システムで修正していかないといけないんですが、今の投票する人たちの年齢構成をみても難しいので、だったらかじれ。その代わり、親のスネをかじって、ちゃんと成果を出せ。成果出せなかったら一生親に頭の上がらない人生を歩め。成果出しても頭上がらないんですけど、成果出さなかったら本当に頭が上がらないですから。
蟹瀬それはうちの娘にも聞かせてあげたいですね。
夏野スネまだあるからですね。
蟹瀬ほぼ骨です。ヨーロッパでバレエやっていて、アメリカで役者を目指してるんです。うちの娘は。これはほとんど成功の比率はものすごく小さいんだけど。
夏野しかし、自分の好きなことをやっていますね。
蟹瀬親の金でね。
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