世界の足元へ「よろこびを敷きつめる」、創業百年を見据えた伸びしろはどこだ
東リ株式会社
代表取締役社長
永嶋 元博
兵庫県伊丹市、この町に大正時代に建てられ、今も尚保存されている建築物がある。95年前の1919年大正8年に創業した会社の本館事務所である。その会社とは床材などに使われる、国産リノリウムを日本で初めて製造販売した、東洋リノリユーム株式会社、のちの東リ株式会社である。東リの95年の伝統と確かな技術に裏付けられた製品の数々は、社会の様々な場所に使われている。5年後の創業百年に向けて、更に飛躍するべく経営戦略をはかる、東リ株式会社 代表取締役社長・永嶋元博に迫る。
白石賢者の選択leaders、今回お招きしておりますゲストは、東リ株式会社代表取締役社長の永嶋元博さんです。
蟹瀬さて、最後になります。3つ目のキーワード、百年とおっしゃいました。これはまた大きな区切りですよね。
永嶋当社はあと5年半で創業百年という、大きな節目を迎えることになります。
蟹瀬創業百年、本当に大きな区切りですよね。そうするとトップに立っている人間としては、そこから新たな事業戦略を考えようと思われていると思うのですけれども、それは具体的にどのようなかたちになってきそうですか。
永嶋創業百年に向けてですけれども、国内マーケットで申し上げますと、創業百年を迎える2019年、この翌年後はみなさま方ご存じの通り、東京オリンピック、パラリンピックの開催が決定しております。そういう意味では首都圏を中心に、建設関連需要が大きな盛り上がりを見せると、そのように期待されると思います。
蟹瀬それは間違いないでしょう。
永嶋しかしながら一時のそういったフォローの風に、決して甘んじることなく、これまでの歴史の中で蓄積してきました、技術のもう少し幅を広げて、魅力ある製品開発に努めていかなければいけないと思っております。
またインテリア業界、全体の活性化という意味では、今われわれの業界だけではありませんが、技能士不足という大きな問題があります。建設関連の技能者不足というのは非常に大きな問題ですが、われわれはメーカーの立場ではありますが、業界が抱える課題に対しても、もう少し積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
蟹瀬やはりどうしてもIT系とかね、そういうほうへ目が向きがちで、特にメーカー、カーペットとなると、なかなか若者がそちらのほうへ目が向かないというケースも、多いのかもしれませんけれども、とても大事だし、僕はインテリア大好き人間ですから、魅力ある仕事ですよね。
永嶋建設関連の仕事というのは、本当にかたちに残る仕事と言いましたけれども、やりがいのある、もっと魅力のある業界にしていかなければいけないと、このように思います。
蟹瀬オリンピックのお話出ましたけれども、競技場とか宿泊施設とか、これからものすごい勢いで整備されますよね。そういうところでは結構われわれも、東リの製品を目に触れるようになるということでしょうか。やはり名前書いていてもらわないと。
永嶋今のお話は国内マーケットですけれども、例えば塩ビ床材、タイルカーペット、この両分野に置きましては、世界のトップブランドと比べても決して引けを取らない、このように自負をしているわけです。
ただ、今の延長線上だけで物事を考えていては、百年の先次の将来、こういったものをしっかりと見せることはできないなというふうに思っております。
独自の技術ですとか品質、デザイン、サービス、こういったものに更に磨きをかけて、今以上にグローバルな視点で、当社の製品が海外にも広くいきわたるように、そういった努力も果たして行きたいなと思っております。
蟹瀬特に近隣のアジア、これからアジア経済というのはどんどん発展していくのは明らかですしね、世界のGDPの52、3パーセント、2025年から2050年の間にはアジアになるだろうと言われて、そうするとそこでのものすごい需要というのは、これから見込まれるでしょうし、現地の企業が追いつこうと思っても、こういう技術は追いつこうと思っても、なかなか直ぐには追いつけないものですよね。そうなるとマーケティングの勝負になってくるのではないかという気になってくるんですけれども。
永嶋おっしゃる通りで、われわれも今までは海外の授業戦略というのは、あまり明確になってなくてですね、国内で売れているものを海外でも売れればというような、どちらかというとスタンスがあったわけですが、これからは海外でどういったものが、どこの国でどういったものをというのを、もう少し明確にして、商品戦略と共に海外の売り上げについては、拡大策をはかっていかなければいけないと、こんなふうに考えています。
蟹瀬グローバル経済の中って面白くてね、つくったものを売るという発想、これはずっと日本の企業はやってきたことで、物作りでやってきているんですけれども、グローバルになった場合には、売れるものを作るという、つまり作ったものを売るのではなくて、売れるものを作るっていう、言葉が逆転した発想って、すごく重要だなという気がしますね。そういう意味であまりハイスペックでもだめなんですよね。ここのところが難しい気がしますけれどもね。
永嶋そういう意味ではタイルカーペットが海外だけにしか売らない、そういったブランドも実は2年前から発売しております。
1番最初に申し上げましたが、当社の創業者の一人、東リという会社ができる前に、「由多加織」というものを作っていたんですが、その「由多加」という名前を日本らしい名前なので、これをブランドネームにしまして、海外専用のタイルカーペットとして販売しております。
蟹瀬いいですね、それは。そういう名前、どんどん使ってほしいと思いますね。今どうなのでしょうか。経済者として1番大変なことって何なのでしょうか。今日本において。
永嶋環境が目まぐるしく変化する。例えば市場環境はもちろんですけれども、原材料の事情ですとか、いろいろな要素が目まぐるしく変わりますので、そういうものにどうやってスピーディーに対処していくかということが、1つ大切です。
物を作る会社としては本当にマーケットが成熟してくると、次に何を作ったらいいか、この目標あるいは研究テーマを見つけることも、なかなか難しい、こういったことをどうやって先ほどから申し上げている、「伸びしろ」の視点で見出していくか、こういったことが非常に大切だなと思います。
蟹瀬もう1つは百年という区切りもありますけれども、企業として社会に対して、どういう貢献をしていくのか、企業として社会にある存在の価値みたいなもの、こういうのをまた見直す機会にもなると思うのですけれども、その辺りはどういうふうにお考えですか。
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