ITプラットフォーマーが時代を動かす?日本はプラットフォームで社会制度設計を


時代刺激人 Vol. 300

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

ITプラットフォーマー巨額所得の捕捉に難、EUの欧州委は「デジタル課税」で対応

問題はまだある。ITプラットフォーマー企業群の稼ぎ出す巨額の利益に対する所得捕捉が難航しているのだ。OECD(経済協力開発機構)の専門委員会はかなり以前から主要国共通の問題として議論してきたが、最近、EUの欧州委員会がAMAZONなどIT企業を対象に「デジタル課税」(仮称)案を公表した。EU域内での売上高に課税しようというものだ。ただ、EU加盟国全体の承認が必要な上に、これらIT企業本社の多い米国の政府が「新たな税負担は米国経済の成長にブレーキをかけるもので、容認しがたい」と批判的だ。米・EU間で現在起きている通商摩擦ともリンクしかねないため、情勢は流動的だ。

以前、この問題で話を聞いた旧大蔵省の税制スペシャリスト、森信茂樹中央大特任教授によると、AMAZONは物流配送センターの倉庫をベースに営業したりしているが、国際課税の原則では物流倉庫は課税対象の恒久的施設とみなせず、事業所得に課税できない、という。しかし現実問題として、巨額の利益を上げているのは事実。しかも課税逃れでタックスヘイブン地域に逃れていれば問題で、国際的にも課税の公平を期すべきだろう。

日本は高齢社会の制度設計でモデルを、プラットフォームで「場」づくりも重要

ここで、このITプラットフォームに関して、私なりに視点を変え問題提起してみたい。私は、人生100年時代という高齢社会に対応して、高齢者を中心に誰もがインターネット上のサイトで自身の人生2毛作目、3毛作目のプランづくりが行えるプラットフォームを、と考えている。早い話がプラットフォームを人生再出発プランなど制度設計の場に活用せよ、と申し上げたいのだ。名付けて「人生100年設計プラットフォーム」(仮称)だ。

人口の高齢化が急速に進む日本の現状を見ると、社会システムや制度が旧態依然としていて、高齢者対応ができていないのが現実だ。最近、東大元総長の小宮山宏さんが新たな成熟社会モデル「プラチナ社会」をめざして取り組むプラチナ構想ネットワークのシンポジウムに参加した際、パネルディスカッションで紹介された神奈川県川崎市の調査に驚かされた。65歳以上の市民25万人のうち75%が非就業者で、定年退職後も仕事を続けたい人の割合が71%、とくに70歳まで働きたいが40%だった。データを見る限りは「働きたくても働く場がない」現実が見えてくる。日本が直面する現実はまさに、この点で、口では高齢化対応を、と言いながら、高齢社会に対応する制度設計ができていないのだ。

アクティブシニアになるためのマッチングサイト、コンテンツ次第では面白くなる

高齢者の人たちにはいろいろな生き方がある。勤め仕事におさらばして勝手気ままに自由なライフスタイルを望む人もいれば、病気との闘いを余儀なくされる人、さらには退職金が底をつき始め、頼りの年金生活も限度があって生活資金確保のために新たな再就職の場を見つけざるを得ない人などさまざまだ。でも、これら高齢者が社会の大きな比重を占め始めていることは紛れもない事実で、それに対応する制度設計がますます重要になる。

そこで、私が考えたのは今回、テーマにしたインターネット上のプラットフォームを活用して「人生100年設計プラットフォーム」を民間主導でつくり、そのサイトにいろいろな企業や自治体、ボランティアグループなどの参加を得て、たとえば再就職先の企業探しのみならず、自治体の有償の地域貢献プロジェクト、さまざまなNPOの事業への参加、社会人大学ゼミ、失敗事例研究のような研究会への参加、さらにはシニア目線のベンチャービジネス立ち上げ交流広場への参加など、まさに高齢者がいきいきとアクティブシニアになれるようなマッチングサイトだ。高齢者は「お荷物」でないことを示す「場」づくりだ。

コンテンツが問われるが、やり方次第では人生100年設計の面白いプラットフォームができると思う。高齢者は、今やスマホでインターネットにつなげることが可能な人が多い。チャレンジしてみる価値はある。高齢社会の制度設計が十分にできていない日本で、プラットフォームが持つ多機能の枠組みをうまく活用し、中国など高齢社会化が進むアジアの国々にとって先進モデル事例となる仕組みをつくればいい、と考える。

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