「凡事徹底」できる企業が生き残る。世界と戦う分析・計測機器メーカーの経営戦略
株式会社堀場製作所
代表取締役会長兼グループCEO
堀場 厚
株式会社堀場製作所は京都に拠点を置く分析・計測機器メーカーだ。元は小さな一軒家からスタートした会社だが、今では国内外の企業を傘下に収めるグループ企業へと発展、その事業は自動車、環境、医用、半導体、科学分野など多岐に渡る。代表取締役会長兼グループCEO 堀場厚は経営の舵を繊細かつ大胆に切ることで、厳しい世界経済の中でも常に前進してきた。堀場が語る世界と渡り合うために必要なもの、日本の企業に欠けているものとは?
松尾 堀場会長のプロフィールを拝見しますと、創業者の息子さんということなんですけれども。小さい頃からいつかはこの会社を!というお気持ちがあったんでしょうか?
堀場 そうですね、父が一度も私に会社を継げ、とか社長になれ、って言ったことはないです。
松尾 そうなんですかぁ。
堀場 はい、ただ私が三つか四つぐらいの時に、まだ幼稚園に行く前に記憶がありまして。一軒家からスタートしてたんですけど。その時から小学校二年ぐらいまで工場の中にずっと住んでましたんで、そういう創業当時のイメージとかですね、父親がどうしてた、母親はどうしてたっていうのは想いがあって。今から思うと、あれだけ小さなオペレーションなのに、誇りとプライドですね。これと想いっていうのは、ずっと変わってないと思います。
私自体も、なんていうかスピリットとか想いは、あまり大きな変化は実はないんです。社長してからも結構会社を大きくなったんですけど、なったときと今と変化はあるかというと、ほとんどないんですよ。
やらされ感がないんですよ。いわゆる、自ら手を挙げたことをやってるだけで、プレッシャーを感じないっていうとちょっと語弊ありますけれども、そういうものはないです。ですから、やっぱり自ら手を挙げるっていうのをすごく大事にしてました。
松尾 こうしなくちゃ、ああしなくちゃという既成概念にも囚われない?
堀場 そうです。言われたことしかしないとなるとすごく辛い、しんどいものになってくると思いますね。もちろん、「おもしろおかしく」というスピリットそのものなんですけど。
堀場 実は会社の経営じゃなくて、飛行機乗りになりたかったんです。
松尾 そうだったんですか!?
堀場 いわゆる戦闘機に乗りになりたかったんです。戦闘機ってのは、究極の人間が操作できる究極の機械なんです。でも、ちょっと私近視でそれもギブアップをして、やむなく堀場に就職したということです。
松尾 やむなくだったんですね!
堀場 でも、その話をアメリカ人の友達に言ってたら、「じゃあパイロットのライセンス取ったらいいじゃないか」ということで、パイロットのライセンスは取るときにいろいろありまして。
堀場 ある時「シングル」といって自分で飛ぶんですね。1人で飛んで。帰ってくると雲が覆ってて着陸できなくて、1時間ほど待ってたら、燃料がなくなってきまして、あと30分しかないと。30分しかないって、コントロールタワーに言ったら「他行け」って言うんですよ。ここから30分かかるんですよ。
(燃料)30分で(飛行場まで)30分だと墜落するかも分からないです。と言いつつ行けと言われたんで、しょうがないので行ったら、嘘のような本当の話なんですけど、ディズニーランドのお城が見えて、雲の間ピュッと下がって強行着陸したんです。飛行場に。そしたら後から電話してこいと。コントロールタワー電話したら30分間説教されて。いかに危険で、もう最低と言われて。これ私のインストラクターどうなるかな、と思ったんですよね。すぐ謝りに行ったんですよ。今でも覚えていますけど。ドアをパッと開けてね。「Congratulation!!」って言ってくれたんです。
松尾 えええ!?
堀場 「これでお前は一人前のパイロットになる」って言った。失敗をしたから。それからもう一つ、お前はパイロットとして最も大事なことをした。飛行機を墜落させなかった。教科書通りにやって飛行機を墜落させたら意味がない。だからルールよりも前に、飛行機を墜落させないというのが、パイロットにとって一番重要。それをお前はきちっとできたと言って、Congratulation。なぜ許されるかっていうと、お前はスチューデントパイロットだからいいって言うんです。だから、正式の免許を取る前に、いろんなことを経験するのがスチューデント。失敗するのもスチューデント。それを財産にできた。お前は素晴らしいパイロットになるって逆に褒めてくれた。その時にやっぱり失敗を財産しないといけないな。
アメリカのすごさっていうのは、失敗を財産にしていく国だな。日本の弱みは、失敗を忘れ去ることですね。だから日本競争力落ちちゃった。だから大学の入学試験もそうですよね。4択があって、答えがないっていうのはないんですよ。世の中答えがないことが多いんですよ。特に経営者と4択選べるようなら、誰でもできるんですよ。答えがないのを答え出す。あるいは答えがないと言い切れる勇気がいるんですよ。この教育を日本はしてないから弱くなって行く。これを変えないといけないと思いますね。
失敗を恐れず、自分を信じて挑戦をする。もし失敗をしてしまっても、失敗はいつか必ず財産になる。それが堀場が考える、今、日本の企業が世界で戦うために必要な力。
堀場が唱える、世界一に向けたネクストステージとは?
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