イノベーション都市深圳レポート 番外編 日本経済が今や中国、新興国から問われている


時代刺激人 Vol. 304

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

イノベーション都市深圳レポート 番外編
日本経済が今や中国、新興国から問われている

イノベーションセンター化が進み、アジアのシリコンバレーと言われる中国深圳の現場をしっかり見ておこう、という日本の企業関係者などが急速に増えている。私自身もその1人だが、最近、深圳訪問した私の友人グループの話を聞いて、中国企業経営者が、日本経済や企業の往時に比べての衰退ぶりを憂えていることを知り、思わず考えさせられた。

中国スマホ大手幹部「あこがれの存在だった日本がなぜ、急速に衰えたのか」

話はこうだ。友人グループが、急成長し世界ランクに入るスマホメーカー本社を訪問、経営陣に面談した際、若手経営者の中に1人だけいた50歳代の経営幹部が、日本側の質問を遮るように「先に、教えてほしいことがある」と切り出してきた。「我々の年代にとっては、日本企業はまさに輝くような、あこがれの存在だった。それがどうして、急速に(勢いがなくなり)衰えたのか、ぜひ教えてほしい」と。真剣な顔つきだった、という。

これに似たことが私の深圳訪問時、広州ジェトロ主催の中国ハイテクベンチャー、ベンチャーキャピタルの企業との交流の場で起きた。「日本企業関係者が最近、ひっきりなしに視察に訪れる。ビジネスチャンスありと思えそうな人にビジネスを持ちかけると、決まって返ってくる答えが『面白いご提案だ。でも私の一存では決められない。東京の本社に戻って話し合って回答する』と。経営判断がスローすぎる。日本企業はビジネスチャンスの芽を自ら摘み取っている」と。私は、聞いていて、指摘どおりと思わざるを得なかった。

近藤さん「敬意と軽蔑が入り混じって『日本は老いた金メダリスト』と聞き、ショック」

これらの問題に関連する話をもう1つご紹介しよう。私の友人で講談社の中国ウオッチャー、近藤大介さんが最近出版した「2025年、日中企業格差」(PHP新書刊)で、興味深い話を書いている。「かつては『日本が手本』『ルックイースト』などと言っていたASEAN(東南アジア諸国連合)は、今や最大の貿易相手国の中国になびいている。ASEANの国際会議を取材すると、日本のことを『老いた金メダリスト』と呼んでいるのを聞き、ショックを受けた。『昔はすごかったのだけどなあ』と、敬意と軽蔑が入り混じったような表現だ」と。親日国が多いASEANのリーダーと目される人たちの見方だけに、辛いものがある。

過去3回の深圳イノベーションセンター報告で深圳問題を打ち止めにしようと思ったところに、こんな話が出てきて、日本の存在が問われた。しかも前回コラムで、日本企業の今後の対応について、私が「日本は、深圳版エコシステムなど彼らのイノベーションモデルを真似るのではなく、秘伝のたれのようなコアの強みの独自技術を知財管理でクローズドにすると同時に、それを武器にオープンな連携などでイノベーションに大胆チャレンジを。その場合、自前主義を捨てることが必須」と問題提起したら、いろいろ参考意見をいただいた。そこで、それらご意見を踏まえ再提案したい部分もあり「番外編」という形で、もう一度、イノベーション問題にからめて日本企業の課題を取り上げたい。

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