ビッグモーター事件、保険金水増し請求で利益かせぎ

2023/12/23

ダイハツ工業も品質不正、企業のガバナンスはどこへ?

企業のガバナンスはいったいどこへ行ったのか、と思わず感じさせたのが、中古車販売大手ビッグモーター(BM)の保険金水増し請求事件だ。主力の板金部門が、保険代理店業務兼務という枠組みを悪用、自動車事故で持ち込まれた顧客のクルマにわざと傷をつけ、保険金の水増し請求を行って利益稼ぎしていた、というもの。悪質の度合いがケタ外れだ。

そんな矢先、ダイハツ工業が、30年以上にわたり対象64車種、海外分を含め件数で174件に及ぶ検査データ改ざんなどの品質不正を行っていた、との驚くべき内容を最近、公表した。軽自動車業界の最大手企業での不正事案だけに、本当に驚いた。
ここ数年、ダイハツ工業以外に日野自動車、三菱電機、東芝などの大企業でさまざま不正が発覚しており、日本企業全体の劣化を改めて実感する。日本は、企業ガバナンス問い直しにとどまらず、企業の現場、そして経済全体で、出直し改革のアクションが必要だ。

BM創業社長「知らなかった、ガバナンス不全おわび」と謝罪

BMの場合、最初、企業ぐるみかと思った。創業者の兼重宏行社長は、今年7月の引責辞任会見で「内部の板金部門から損保会社への保険金不正請求があった。社内の特別調査委員会報告で、事件を初めて知った」という。「最終責任は当然、経営にある。企業ガバナンスが機能不全に陥っており、深くおわびする」と謝罪したのは当然だが、株式非上場のオーナー企業のもとで起きた重大犯罪で、企業ガバナンスが働いていなかったのは大問題だ。

それにしても行政側の対応が遅かった。金融庁のBMへの損保代理店業務登録取り消し処分は大問題になって4か月後の11月末。悪質企業にはスピーディな厳罰対応が必要だ。

降格処分「悪意はない、敗者復活による人材活性が目的」

そこで、企業ガバナンスの事例研究ということで、BMの保険金不正請求を検証した。創業社長は「特別調査委報告書を見るまで知らなかった」というが、それもおかしな話だ。板金部門の悪質行為によって、巨額保険金がBMに入っており、全体統括しているはずの経営が知らないはずはない。創業社長は、自動車修理と損害保険を結びつけるビジネスモデルで頭角を現したというだけに、足元で組織が機能不全を起こしているのは理解しがたい。

BMの特別調査委報告書を読んでみて、「儲けることに専念しろ」という利益至上主義が、この企業組織に問題を引き起こしたのは間違いない。とくに社員の降格処分人事を煩雑に行ったことが問題だ。創業社長は辞任会見で「行き過ぎはあったが、悪意はない。敗者復活のチャンスをねらったもので、人間は活性化を通じて成長する」と述べた。しかし調査報告書では降格人事に客観基準が全くない、という。とても企業の体(てい)をなしていない。

超高齢社会時代対応、日本が率先して先進モデルを

2023/9/10

若者・シニア交流で政治動かし方向付け、新社会システムも

次代を担う子供たちの数が極度に少なくなる人口の少子化に、急速な高齢化が加わり、深刻な事態に陥っているのが今の日本だ。65歳以上の人口比率は現時点で29.1%にまで膨れ上がり、世界で断トツの超高齢社会国になった。この現実を衰退の予兆とみるか、アクティブシニアをつくり出して活気ある成熟度の高い国にするか、まさに正念場だ。

カギを握る1つが、若者とシニアの間の世代間交流だと考える。超高齢社会という新たな社会状況のもとで、シニア世代が数の面で比重が高まるのは事実。しかし、社会を動かす中核世代は今後の日本を長く担う若者世代だ。彼らがシニア世代にどう対応するかがポイント。若者世代からすれば、シニア世代の年金など社会保障を支える側に回って負担を強いられ、シニア世代への不満が根強く、注文も多いはず。そこで、2つの世代が世代間交流によって本音で語り合い、そのパワーで政治や行政を動かし新たな方向付けを行ってほしい。

シニアは若者世代との交流で化学反応を起こせ

私は日ごろから、人生椅子取りゲームにたとえて、シニアは自分の座る椅子にしがみつかず、若い世代に椅子を譲れ、そして、譲った後は、シニア自身で独自にアクティブに活動する面白い椅子をつくって、それぞれ棲み分けすればいい、と言っている。大事なのは、シニアと若者が世代間交流によって互いに刺激し合い化学反応が起きるようにすることだ。

化学反応は、全く異なる性質の物質が相互作用で新たな特性を持つ物質を生み出すことだ。シニアと若者の両世代が交流を通じて、たとえば、シニアが若い世代の持つ斬新な発想やアイディアに刺激を受け、これまで発想もしなかったシニア新市場を誕生させる可能性がある。また、若い世代も、シニアの持つ経験ノウハウや技術をベンチャービジネス立ち上げに生かし、ユニコーン誕生につなげる「大化け」もあり得る。楽観視はできないが、これらが好循環すれば、超高齢社会時代対応の新交流システムが現実になるかもしれない。

人口減少が見えていたのに放置、政治の責任は大きい

2023/6/30

今や人手不足は深刻、少子化対策と同時に外国人積極活用も

ご存じだろうか。岸田首相は最近の記者会見で、次のように述べている。「若年人口が急減する2030年代に入るまでの今後6、7年が少子化トレンドを反転させるラストチャンス」、「若い世代の所得を増やすことを含め、すべての子育て世代に切れ目なく支援していく。これまでとは次元の異なる少子化対策が、今こそ必要だ」と。

この発言部分だけを切り取れば、岸田首相は少子化を含めた人口減少問題に、やっと取り組むのだな、との評価になる。しかし私の立ち位置は全く異なる。日本が人口減少に転じたのは2008年。それ以降、ずっと減少を続けているのに、大胆な政策対応がなかった。その点で、15年間も人口減少を放置してきた政治の責任は実に大きい、と言いたい。

ドライバー不足でモノが運べない「2024年問題」

率直に言おう。政治や政府が大胆な人口減少対策を放置した結果、今、生産年齢人口と呼ばれる15歳から64歳までの中核担い手の人たちの間で問題が深刻化している。人口減少対応の少子化対策も重要だが、足元の人手不足対策も待ったなしの状況なのだ。

運輸産業の現場がその1つだ。長距離ドライバーの時間外運転には意外にもルールがなく、過重労働職場だ。そこで政府は、2024年から新たに年間960時間の上限を設定し、働き方改革につなげる、という。しかし長距離運送の現場では、この新ルールに対応すると大幅減収になりかねない、と最近、職種転換する動きが表面化、このため、ドライバーの人手不足によって、モノが運べず大混乱をもたらす「2024年問題」が危惧されている。