

千葉のモノづくり企業がなぜ海外でも成功した?ある専門メーカーの物語
下村特殊精工株式会社
代表取締役社長
安田 保馬
下村特殊精工株式会社は大同グループの「みがき棒鋼」と呼ばれる素材加工を専門に行う企業だ。70年以上に渡り、日本のモノづくりを支えてきた。代表取締役社長 安田 保馬は自社の技術をさらに高めながら、人材育成、現場の仕組みづくりなどの改革を進める。自社だけでなくお互いが「補完」しあいながら成長するという、安田の成長戦略に迫る。
蟹瀬賢者の選択 Leaders、ナビゲーターの蟹瀬誠一です。
ドーキンズドーキンズ英里奈です。
蟹瀬今回は長年養ってきた技術で、ものづくりの一翼を担うある企業の取り組みに迫ります。
下村特殊精工株式会社。1941年、日興製作所として発足し、工具鋼のドリルロッドの制作と鋼材の研削加工を開始。1952年、株式会社 下村製作所を設立。1958年、現在の下村特殊精工 株式会社に社名を変更。1959年、大同特殊鋼株式会社が資本参加し、大同グループの「みがき棒鋼」専門メーカーとして業容を拡大。
以来、下村特殊精工のみがき棒鋼は長きにわたり、OA機器や自動車など、幅広い分野で活用されている。70年以上の歴史を持つ下村特殊精工を率いるのは、代表取締役社長 安田 保馬。
安田世界的な視野を持ちながら生活の中で豊かにしていけるような製品を提供し続けていきたい。
最高品質は最高の環境で生まれる。安田が唱える、暮らしに役立つものづくりへのさらなる挑戦とは?
ドーキンズそれでは、本日のゲストをご紹介します。下村特殊精工株式会社 代表取締役社長 安田 保馬さんです。よろしくお願いいたします。
蟹瀬どうも、よろしくお願いします。
安田よろしくお願いします。
蟹瀬長年の間ですね、ずっと築いてこられた技術力があって、しかもそこに戦略があるというお話を伺ってますので、そのあたりを今日はじっくりお伺したいと思います。よろしくお願いします。
安田よろしくお願いします。
ドーキンズさて冒頭のVTRでもご紹介ありましたが、下村特殊精工は、みがき棒鋼専門メーカーとして事業拡大されてきたということですが、こちらがそのみがき棒鋼ですか?
安田そうです。「引き抜く」「削る」ということでみがき棒鋼を作っています。
蟹瀬「引き抜く」というのはどういう技術なんですか?
安田お客さんの必要な穴を開けた治具を作りまして、そこにその鋼材を通して、引き抜いて、お客さんの求める製品サイズにしっかり仕上げていくという加工が「引き抜く」という1つの加工の仕方になります。
蟹瀬「みがき棒鋼」って言葉は我々正直聞いたことがなかったんですけれども、言葉はどういう形で出てきたんですか?
安田昔は飛行機とか、トラックとか、だいたい鉄板を繋ぎ合わせてリベットで留めるために穴を開けるんですけど、そこにドリルがまっすぐに穴を開けられるように「磨く」というんですかね、まん丸にするために加工するのを「みがき」という言い方をしています。
ドーキンズどういった製品に使われているんですか?
安田それはですね、今とても身近な製品がございます。これです。(解説図を取り出す)
安田ボールペンの先に使われています。この「ボールペンチップ(ボールを支える先端部分)」というのが当社で加工してメーカーさんに行って加工されてボールペンチップに使われています。国内では、このステンレスボールペンチップということでは8割から9割ぐらいのシェアを当社が持っています。
蟹瀬独占に近いわけですね。
安田ステンレス製に限ってはそうです。
蟹瀬だけどあまりにニッチな話ですからね。よくわからないとこもあるんですけど、これはやっぱり特別な技術がそこにあるということですか?
安田普通のボールペンは銅中心の柔らかい真鍮だとかニッケルシルバーで使われることが多いですけれど、日本とか中国の漢字圏ですとちょっと筆圧が高いことになります。そうすると柔らかい材質ですと、先っぽのボールがポコンと中に入ってしまうことがありますから、書き味が良く、削りやすくて硬さが漢字圏に合う材料ということを開発して、当社でさらに加工を加えてお客さんに届ける品物になります。もう一つ身近な製品としましては、こちらのハードディスクになります。(ハードディスクのイラストを取り出す)
この中で当社のみがき棒鋼が使われておりますけれど、どの辺りだと思いますか?
ドーキンズえぇ!?
蟹瀬どこかなぁ?ドーキンズさんどう?
ドーキンズ真ん中のところは丸いからはなんとなくそれっぽいなぁ、と思うんですが。
安田当たりです。ここの周り(スピンドルモーター)にシャフトみたいなのが入っています。この周りもお客さんで削って、ハブと言われますけれども、こういう記憶媒体を支える役割のものと、もう一つ、読み取り機に細かく動くところ(スイングアーム)がありまして、ここの根本のシャフトとかカバーを加工して使っていただいています。
蟹瀬こちらのマーケットシェアをどのぐらいですか?
安田7割ほど当社のシェアで占めております。あとパソコンに繋がるんですけど、プリンタシャフトの紙を送るところとか、エンジンの中に入ります給排気のバルブのもとは、こういうみがきシャフトから加工されてああいうバルブになっています。
あとは、最近ですと光通信関係とかドローンもみがきから使われていまして、外観ではなかなかわからないんですけれど、割と身近な製品の中で活躍している製品が多いと思います。
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