働き方改革は残業減らしでは効果なし


時代刺激人 Vol. 309

牧野 義司まきの よしじ

経済ジャーナリスト
1943年大阪府生まれ。
今はメディアオフィス「時代刺戟人」代表。毎日新聞20年、ロイター通信15年の経済記者経験をベースに「生涯現役の経済ジャーナリスト」を公言して現場取材に走り回る。先進モデル事例となる人物などをメディア媒体で取り上げ、閉そく状況の日本を変えることがジャーナリストの役割という立場。1968年早稲田大学大学院卒。

社員の暮らし方改革で「選ばれる企業」めざす

「カゴメに来て驚いたのは、役員報酬額が全員、同額だったことです。役員のミッションはさまざま。当然、仕事内容によって責任の重み、それに見合う報酬も違ってくるはず。そこで、なれ合い風土をなくすため役員の仕事内容の評価制度をつくり報酬に差をつけました。そして、社員にもそれをオープンにし、経営陣から率先改革して、会社全体の働き方改革につなげたい、と社長の了解を得て、大胆にやりました」と。

こうして有沢さんは老舗企業の組織改革に取り組んだ。中でも興味深いと感じたのは、カゴメの働き方改革というよりも、カゴメ社員1人1人に新たな暮らし方や生き方の改革を求め、それらによって外部からカゴメが「選ばれる企業」になること、そして社員自身が誇りを持てる企業にしようという考えで、次々と手を打ったことだ。

在宅勤務、副業とは異なる「複業」に道筋

具体的には月の何日間、パソコンやスマホを使って在宅勤務を含め時間や場所にこだわらずに仕事できるテレワークを積極導入した。子供の保育や介護対象の親を抱える社員にとってはGOOD NEWS。朝夕の通勤ラッシュのストレスから解放され仕事の能率も上げるプラス効果を狙った。何と経営トップにも、時にテレワークの実践を求めたという。

極めつけは、世の中で言う副業ではなく「複業」の解禁だ。カゴメとしては社員のキャリア構築を重視、との発想がベースで、会社の利益に反しなければ外部でどんな仕事も原則自由、という。ただしカゴメが主たる雇用者で、社員の健康管理義務があるので、労働時間管理を求め、年間の総労働時間1900時間未満の人のみ対象、という。副収入確保は結果論で、まずは社外での人脈ネットワーク確保などを勧めた。わくわくさせる話だ。

「複業」制度先行のサイボウズもユニーク

この「複業」で先行しているのが、インターネットなどを活用して電子掲示板、スケジュール管理、ビデオ会議などオフィスのグループワークスを進めるサイボウズだ。きっかけが面白い。ある社員が余暇に通ったテニススクールから「技術センスがいいので、ぜひテニスコーチをお願いしたい」との誘いを受け、会社にアルバイト相談してきたのをきっかけに、2012年に「複業」を解禁した、という。

サイボウズの場合、制度化のロジックがしっかりしている。執行役員で人事本部長の中根弓佳さんは「副業は主に対する副で、副収入を得る発想が強いです。しかし私たちの場合、複業を仕事のサブのような副でなく、すべて並列のパラレル、マルチと捉え育児や介護、ボランティア活動など価値創造につながる活動ならばOKとしたのです」と述べる。社員個人の価値創造につながるならばいいよ、という発想が素晴らしい。
会社の資産を棄損させる複業はNOとルール化したが、結果的に、企業サイドにとって社外知識の取り込みがイノベーションにつながるほか、指示待ちのぶら下がり社員に自立を促せるプラス効果が出たほか、個人ベースでも収入増、外部人脈の拡大などメリットが多い。また、社会全体の「シェアリング」にも貢献できるという。時代先取りの発想だ。

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