日本の将来を担うリーダーの共演!世界の課題を解決する起業家の最前線

今年で4回目を迎えたビジネスプランコンテスト「日本アントレプレナー大賞」。このコンテストは、日本のトップ経営者たちで作られた賢者の選択リーダーズ倶楽部が創設。新人起業家のビジネスアイディアを発掘・選考、さらに、産業家へのサポートなど。次世代のアントレプレナー創出に一役買っている。今回は2018年、2019年で大賞を受賞した2人の起業家の取り組みに迫る。賢者の選択 FUSION。

蟹瀬 賢者の選択 FUSION、ナビゲーターの蟹瀬誠一です。今回のテーマは、アントレプレナー。「新しく会社を作る人」という意味ですけれども、最近は起業が大変頻繁に行われてます。
しかし、欧米と比べますと、やはり日本の起業の数というのはまだまだ少ないんですね。やはり手続きが煩雑であったり、資金を調達するのが難しい、リスクのことを考えるとなかなか一歩前へ進めない。いくつかのケースがあると思うんですね。しかし、近年になりまして、政府あるいは大きな企業がサポートをしてくれたり、クラウドファンディングという新しい資金調達方法、これも出てきました。そういう意味では、この企業を取り巻く環境は、今大きく変わってきてるんですね。
というわけで今回は、日本アントレプレナー大賞を受賞した2つの会社の取り組みに迫りまして、起業の取り組みの最先端を見てまいりたいと思います。

SAgri株式会社 代表取締役社長の坪井俊輔24歳。この会社は、農業に特化したソフトウェアの開発や、データ提供のサービスを行っている。現在、農業で問題になっているのは、高齢化による人手不足やノウハウを伝承する難しさだ。これらの問題を解決するため、SAgri株式会社は、衛星データと地上データを利用して徹底した効率化を進め、農業の救世主を目指している。
開発したのは、農業管理アプリケーション「Sagri」。農業は天候や土壌の状態など、あらゆる条件が整わなければ成り立たない。さらに、経験と勘が頼りになるため、新規就農者や若い世代が参入するには、サポートがないと非常に難しい現状がある。それらを一挙に解決するのが、Sagriだ。
アプリに自分が持つ農地の情報を登録。栽培する農作物や品種、作業項目などを入力するだけで、様々な情報を分かりやすく可視化することができる。さらに、衛生が捉えた土壌のデータを地上のデータと統合することで、農地の肥沃度や、土壌の有機物の量を表す腐食含有量などが分かるようになる。この腐食含有量が高いほど、作物の生育に適しているといわれている。つまり、この画像だと、赤色に近いほど良い土だといえる。SAgriを利用すると、このように、農地一つひとつの状況がわかるようになる。農地に適した作物や種まきの時期、さらには収穫時期まで的確にわかるようになるのだ。農家はこうしたシステムが実用化されることに期待を寄せている。

農業関係者 今まではやっぱり何カ所か土取って、それを調べたりして結構手間だったんで、それがわかるっていうのはいいことだと思いますね。

オングリット株式会社 代表取締役社長の森川春菜。オングリットは、橋やトンネルなど、構造物の点検調査を行っており、それを支援するソフトウェアや、土木関連機器の開発も行っている。日本では、街灯や標識などインフラの老朽化が問題になっている。また、土木業界も技術者の高齢化と人手不足に苦しんでいる。
森川は、このような状況を打開するため、街灯点検ロボットを開発した。このロボットは街灯や標識の点検を、少人数かつ短時間で行うことができる。オングリットは北九州高等専門学校にロボット製作を依頼。街灯や標識の検査をするロボット開発は、日本で初めてだという。
このロボットが可能にすることは作業現場の少人数化だ。街灯の点検作業は、点検作業員や誘導員など多くの人員が必要となる。しかし、このロボットを導入すると、点検に関わる人数を2人に削減でき、更に危険の伴う作業をせずに、損傷をチェックできるようになるのだ。
もう1つの特徴は、AIの活用。ロボットにより撮影された画像データをAIが診断。損傷箇所の特定をしてくれる。この赤く囲まれた部分を見てみると、ナットが緩んでいることが分かる。これまでAIに学習させた画像データはおよそ1万枚。これにより、精度の高いチェックが可能となり、熟練の技術者の目に劣らない点検作業を行うことができる。街灯点検ロボットは、現場の救世主として期待されている。

蟹瀬 それでは、改めまして日本アントレプレナー大賞を受賞されたお二人、ご紹介いたしましょう。お一人目はSAgri株式会社の坪井俊介さん。よろしくお願いします。

坪井 よろしくお願いいたします。

蟹瀬 そして、もうひと方がオングリット株式会社の森川春菜さん。よろしくお願いします。

森川 よろしくお願いいたします。

蟹瀬 でも冒頭の映像見てたら、二人ともすごい技術ですね!

坪井森川 ありがとうございます。

蟹瀬 いや、僕らの世代から考えると、とてもじゃないけど思いつかないなっていう。あの辺のヒントってどっから出てくるのか、じっくりお伺いしたいと思うんですけど。まず、坪井さんにこの「Sagri」。これは農業管理アプリケーションと言っていいんですかね。この魅力っていうか、すごいとこってどこなんですか?

坪井 私達のアプリケーションは、宇宙のデータとアプリケーションで取れるデータを相関させることで、土に特化して管理することができるアプリケーションです。今、高齢化が進んでる中で、次の担い手であったりとか、新しく参入する農家さんが使えるような、そして、未経験でも農業ができるように即したアプリケーションを開発・提供しています。

蟹瀬 そして森川さん。この「街灯点検ロボット」。見てるだけで楽しいですね。

森川 ありがとうございます。

蟹瀬 あの登っていく感じ。

森川 はい。ドローンの様に見えるんですけど、ドローンではないため、ドローンパイロットが不要で、交通規制も必要ではなくなるんですよ。これまでは、高所作業車という点検車で点検を行っていたので、規制図を作成して、現場では交通規制をし、誘導員を配置し、それがロボットに置き換わることで、時間を4分の1で調査を進めることができ、費用も1現場あたり約9万円削減することができます。

蟹瀬 やっぱり人手不足とか、いろんな技術の伝承の仕方とか、お二人を見てると、この辺のところの問題を解決しようという感じがよく出てると思うんですけども、これ実際の現場に行った場合に、坪井さん、どういう問題を皆さん抱えてらっしゃるっていうのを、感じ取られたんですか?

農業の問題

坪井 農業はアナログな領域でして、どこ行ってもやっぱり手作業で記録をされていて、全て書類の形でまとめていらっしゃると。そういったものが何年何十年と重なって、代々引き継がれているわけですけれども、非常にそこら辺が、頭の中でそういうのを見て管理してやっているので、全然もうバラバラなんですね。それがまず1つ。
もう1つが、テクノロジーが進んでいる中で、そのテクノロジーが世の中で広まっているのにも関わらず、農家さん側にはなかなか届いていなくてですね、どれを使ったらいいのだと、どういったもので、効率がよくなるなってところがまだギャップがあるというところがございます。

蟹瀬 やはり農業は高齢者の方も多いですからね、急にパソコン使ってこうしてこうしろって言われても、すぐには入っていけないところありますよね?

坪井 まさしくそうなんですよね。結構ドローンとか、IoTとかいろんな機械は出てきているんですけれども、それを集約させるアプリケーションがないんですね。いわゆる、それぞれが出てくる定量的なデータというところを、生かすことが今できていない。それが今のスマート農業の促進を妨げていると思います。

蟹瀬 スマート農業ね!いいですねぇ。スマートな土木作業はどうなんでしょうかね。やっぱり現場はなかなかこれからまだ道長いという感じですか?

「縁結び」という使命。社長の地位を捨て、理想の会社を立ち上げた男の生き様

革新的な仕組みを導入し、徹底的に働き手に寄り添う企業がある。

寺本 もう24時間365日、登録をしていて、それでもうすぐに仕事の情報が得られると言う形です。

株式会社エントリー 代表取締役社長 寺本潤。

信頼と期待に応えるために情熱を燃やす。その先に見据えるものとは?

寺本 金儲けよりも社会に貢献しようという意欲が強い集団ですね。

エントリーは短期に特化した人材派遣業として、物流・食品製造・イベント運営など多岐にわたる業種に派遣を行っている。世の中にないサービスを打ち立て、社会がもっと便利になるとき、そこに新たな価値が生まれる。賢者の選択 FUSION

松尾 賢者の選択 FUSION、ナビゲーターの松尾英里子です。

ドーキンズ ドーキンズ英里奈です。改めて、本日のゲストをご紹介します。株式会社エントリー 代表取締役社長 寺本潤さんです。よろしくお願いします。

寺本 どうも、よろしくお願いします。

ドーキンズ まずは、エントリーの事業と歴史をコンパクトにご紹介するショートイントロダクションです。

株式会社エントリーは、現在の代表取締役社長である、寺本潤が2014年に設立。人手が必要な企業と1日単位で働きたい求職者のマッチングを中心とする、短期に特化した人材派遣業を展開している。

創業の経緯

ドーキンズ さて、エントリーは2014年に寺本社長が創業されましたが、どのような経緯で会社を立ち上げられたんですか?

寺本 はい。元々は全然関係のない業界で働いてたんですけども、1995年の阪神大震災のときに、会社がちょっと駄目になりまして、転職をしようということで転職活動をしていました。
そのときに転職活動で出会ったのが、こういう短期の人材派遣のアルバイトで、派遣スタッフとしてまず登録をしました。その派遣会社が、ベンチャースピリッツあふれる会社でしたので、そちらの方に心惹かれてですね。そこの会社の社員になりました。
そこから、その創業者の社長に憧れて14年間で、一アルバイトの派遣スタッフから社長になったんですけども。

ドーキンズ なぜ社長を辞めてまで、起業しようと思ったんですか?

寺本 やはり昔のベンチャースピリッツあふれる経営と、東証1部の経営と、自分が思い描いてた風景とちょっと違ったわけですね。

こうして寺本は2014年、短期に特化した人材派遣会社、エントリーを設立。短期に特化した意図はどこにあったのか?

短期に特化した意図

寺本 もともと15年間勤めてきた会社が、どちらかというと短期に重きを置いた派遣の仕事でしたので、そのノウハウがあるという部分と、それから今、日本の世の中は労働力不足というふうにおっしゃられていますけれども、一瞬一瞬の労働力、というのが必要になってくるタイミングがあるわけですね。
そういったところに学生さんとか主婦の方とか、それから、ちょっとだけ働きたいシニア層の方とか、そういった方にうまく我々を利用していただいて、働ける選択肢を与えてあげたいなということで、短期に特化しています。

他者との差別化

松尾 今人材派遣の会社ってたくさんありますよね。そういった中で、どういったところに他社との違いがあるんでしょうか。

寺本 我々の場合は、スマホで登録ができ、しかも24時間365日ですね。
登録ができてそれですぐに仕事の情報が得られると言う形です。

ドーキンズ 私は今、青森県青森市にあります「青森登録受付センター」に来ています。早速お邪魔したいと思います。

2018年7月から運用が始まった。こちらの登録受付センターでは、コールセンターとして求人対応、求人案内、ウェブ面接、求人採用の呼び込みを24時間対応で一括して行っている。

ドーキンズ こんにちはー。

小鹿 こんにちは。

ドーキンズ ドーキンズ英里奈です。

小鹿 エントリーの小鹿と申します。

ドーキンズ 今日はよろしくお願いします。

小鹿 よろしくお願いします。

ドーキンズ こちらではWeb面接を行っているということですが、どのように面接をしているんですか?

小鹿 はい。スマートフォンのカメラ機能を使って行っています。

エントリーが行っているWeb面接は、事前に「スマジョブ」というアプリで名前・年齢・住所などの個人情報を入力。その後、事前に予約した時間に電話を受けて、Web面接が始まる。面接では、事前に登録した個人情報の確認のほか、就業環境に合わせてこんな質問もされる。

面接官 ご就業に当たりまして、確認事項ですが、現在の髪の毛の色を確認しております。髪の毛何色になりますか?

ドーキンズ 茶色です。

面接官 はい、かしこまりました。ありがとうございます。あとはですね、お仕事の際に、ピアスやメガネ、ネイルなどの着用はございますか?

ドーキンズ ないです。

面接官 はい。ありがとうございます。では、ご登録に必要なお顔の撮影いたしますので、そのまま正面を向いていただきまして。321で撮影いたします。

ドーキンズ はい。

面接官 はい。3 2 1。こちらからのご案内以上でございます。ご登録に関しまして、何かご不明な点はございませんか?

ドーキンズ 大丈夫です。

面接官 はい。ありがとうございます。ではお時間いただきありがとうございました。

ドーキンズ ありがとうございました。

面接官 失礼いたします。

ドーキンズ 面接っていうと、どこかに行く。で、その先でするっていうイメージですけれど、こうやって携帯でまた短い時間でどこでもできるっていいですね。

小鹿 そうですね、やはりご足労いただかなくていいという点が、当社の魅力になっているかなと思ってます。

「投資」が世の中をより良くする?会社のオーナーシップと
その本質とは

投資の本質を捉え、投資の意義を説く企業がある。

奥野 本当にいい会社があるんであれば、そこのオーナーになることでその会社に儲けてもらうっていう、それが僕は本当の投資の意味だと思うんですけれども。

農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役CIO 奥野一成(おくのかずしげ)

経済大国でありながら、なぜ日本では投資家が育たないのか?

奥野 オーナーシップとしての投資をする、そういうことが世界を良くしていくだとか、そういったことが実は、資本主義の根幹なんですということっていうのを、あんまり全然教えられてこないということだと思いますね。

農林中金バリューインベストメンツは、長期厳選投資に特化して事業を展開している。独自の戦略と圧倒的な情報収集力で、企業に投資をするとき、そこに新たな価値が生まれる。賢者の選択 FUSION

蟹瀬 賢者の選択 FUSION、ナビゲーターの蟹瀬誠一です。

坪井 坪井安奈です。改めまして、本日のゲストをご紹介します。農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役CIO 奥野一成さんです。よろしくお願いします。

蟹瀬 どうも、よろしくお願いします。

奥野 どうぞよろしくお願いいたします。

坪井 まずは、農林中金バリューインベストメンツの事業と歴史をコンパクトにご紹介するショートイントロダクションです。

農林中金バリューインベストメンツは、2007年、農林中央金庫株式投資部に、長期厳選投資のための専担チームとして立ち上げ。2014年、投資家の長期資産形成に資することをビジョンとして、農林中金バリューインベストメンツを設立。その後、個人投資家向けアメリカ株式長期厳選ファンドの運用を開始するなど、一貫して長期厳選投資を追求している。

投資の意義

坪井 さて、まず初めにお伺いしたいのが、奥野さんにとって投資の意義とはどういった物でしょうか?

奥野 人生100年といわれるようになったわけですけど、そういう状態になったときに、お金って足りないんですよね。もともと社会のシステム、たとえば年金にしてもああいうものは、雇用にしたって、80歳ぐらいで大体死ぬということを前提にもともと組まれているので、そうすると足りないと。そういうときにどうするのか。人に稼いでもらう。本当にいい会社があるんであれば、そこのオーナーになることで、その会社に儲けてもらうっていう。それが僕は、本当の投資の意味だと思うんですけれども。

蟹瀬 私もほぼ70歳なので、やっぱりここから先、100年といわれたら後30年あるわけで、そうすると所得は当然減ってきますよね。体の方も言うこと聞かなくなってくる可能性があると。そうすると不安が大きくなるんで、不安をどうやって減らしていくかっていうのは、投資っていうものの必要さを感じるところだったりするんですけどねぇ。

奥野 おっしゃるとおりですね。

蟹瀬 坪井さんほら、まだ先が長いですよね?

坪井 あはは、そうですねぇ。将来のお金に対する漠然とした不安っていうのはあるんですけれども、投資っていうのも何かちょっとギャンブル性が高いものというか、そういうイメージがまだありますね。

投資の認識を変える

奥野 投資って言ったときに、そこのところの認識を買いたいなっていうのが、僕らが今やっていることなんです。例えばディズニーの株を保有すると、単純に言うとミッキーマウスに働いてもらうと、そういうものを見つけてしまったら、売り買いなんかする必要ないですよね。それが長期投資。

蟹瀬 でも先ほどおっしゃったようにね、やっぱりオーナーシップっていう感覚がなかなか日本の個人投資家の中にはないと思うんですよね。要するに株買うっていうことが、その企業の弱小ではあるけど、普通の場合は。オーナーになってるんだっていう。そういう意識はあまりなくて、どうやって株価を上げてキャピタルゲインを取るかっていう。

奥野 投資って、0から1を生むことってできないんですよ。0から1を生むのは、企業家なんですよね。事業活動しか0から1を生む、世の中に意味のあるものを残すっていうのはないんですね。投資家ができることっていうのは、その1になるものをできるだけ早く100にする。
飛行機なんかいうと、ライト兄弟が飛行機を飛ばしただけでは、こんなことにはなってないんだと思うんですね。そこに投資家がいて「これ儲かるぜ!」と言って、投資をしたから今この世の中が変わっているんです。
文明って、結局0-1を作る企業と、1-100にする投資家の両輪、これが資本主義そのものの考え方で、そういうことだと思うんですよ。結局僕たちは何に投資をするのかというと、企業が上げる営業利益っていうところに投資をするわけですね。
企業が利益を上げるっていうのは、一体どういうことかというと、そのAという企業がその企業のお客さんの問題を解決した対価として儲かるわけですね。これはよく言われる、モノを作って安く作ったから、利益が出てるという発想ではなくて、もっとこのお客さんサイドの方から見てみたときに、良い企業というのはお客さんの問題を大きく解決していると。それをお客っていうのをもっと広くとると、社会の問題を解決しているということなんですね。長く投資ができるというのは一体何かというと、世の中の問題を解決し続けていると。そこに投資をして、その見立て通りであれば、儲かるわけですね。

安全運転経営でデジタル革命時代を乗り切れるか

安全運転経営でデジタル革命時代を乗り切れるか

米写真フィルム大手コダックが、デジタルカメラのフィルム侵食を楽観視し企業破たんに追い込まれた、という事例をもとに、私は前回コラムで、デジタルイノベーションが既存企業に及ぼすデジタル革命の厳しい現実を取り上げ、危機対応を強くアピールした。

その際、コダックと対照的に、富士フイルムが、時代の先を見据えて強い危機感を持ったカリスマ的経営リーダーのもとで、光を記録するというフィルム技術のコア部分を残す一方で、化粧品や医薬品などの「第2の創業」を創出、見事に危機を克服した事例を紹介し、今後を考えるうえでのヒントになる、と問題提起した。そのキーポイントは、安全運転経営ではデジタル革命時代を乗り切れない、ということだ。

「『巨大装置産業』化した企業に新陳代謝を」

前回コラムでのデジタル対応の問題に対し、危機感を共有する方々から、とても参考になる問題提起が数多くあった。いくつかを紹介させていただこう。いずれも卓見だ。

「デジタル化のスピードは、とてつもなく早い。その危機感が足りないように思う。東日本大震災時の津波映像を見ていて最初、さわさわと来たと思ったら、あっという間にどかんとやってきた。デジタル化はあんな感じでやってくる。危機対応がすべてだ」

「日本企業は今や『巨大装置産業』になってしまっている。巨大組織が変化に機敏に対応できる状況になっていない。過去のビジネスを完全に捨て、新ビジネスを立ち上げるのが難しい構造だ。だが、デジタル化対応という点で新陳代謝が起きないと多くの日本企業が、米国と中国のプラットフォーマーの『下請け小作人』という状況に陥りかねない」

「企業変革のカギは、過去の成功体験といかに離別できるかに尽きる。課題解決型の製品サービスから脱却しグローバルレベルの課題をまず見つけ、それを解くために旧来とは比べ物にならないスピード感で他社と協業、オープンイノベーションを起こせるかだ」

エネルギー転換という時代の節目にさらされた、プラント建設企業の戦略と組織作り

戦後日本のエネルギー供給を支えてきた企業がある。日本建設工業株式会社。

笹岡 電気エネルギーを作る製造設備ですね。そういうものを建設するのに携わっています。

代表取締役社長 笹岡智充。日本建設工業は、総合プラント建設企業として、長年にわたり、幅広い分野の建設・保全業務に携わっている。親和性のあるスポーツを通じて社会貢献に取り組む。

笹岡 目標に向かって頑張っている人からパワーをもらえますよね。

スポーツ選手をサポートすることで、社員の意識に統一感が生まれる。

笹岡 団結力、それから愛社精神というのが非常に向上した、というふうに感じております。

培ってきた技術力と社員という人材力で可能性に挑戦するとき、そこに新たな価値が生まれる。賢者の選択 FUSION

唐橋 賢者の選択 FUSION、ナビゲーターの唐橋ユミです。改めて、本日のゲストをご紹介します。日本建設工業株式会社 代表取締役社長 笹岡智充さんです。どうぞよろしくお願いいたします。

笹岡 よろしくお願いします。

唐橋 まずは、日本建設工業の事業と歴史をコンパクトにご紹介するショートイントロダクションです。

日本建設工業株式会社は、1945年、帝國機械建設株式会社として創業。1946年、日本建設工業株式会社に社名を変更。1948年、北海道炭鉱汽船清水沢発電所の据付工事を機に火力発電所工事に参画。1967年、関西電力美浜原子力発電所の据付工事を機に原子力発電所工事に参画。現在は、全国の火力発電所や原子力発電所など、エネルギープラントの建設やメンテナンスを中心に事業を展開している。

エネルギープラント建設

唐橋 まずはじめにお伺いしますが、ここ数年、「エネルギープラント」という言葉よく耳にするんですけど、エネルギープラント建設というのは、具体的にどういった事業なんですか?

笹岡 エネルギープラントというのはいろいろ種類がございまして。弊社では、電気エネルギーを作る製造設備ですね。そういうものを建設するのに携わっています。ゼネコンさんが造成とか、それから防波堤の設置とか、それから発電所構内の道路とか、そういうそういうものを作ったり、あるいは建物を作ったりします。
その中に据え付く発電設備。蒸気を作るボイラとか、あるいは蒸気から電気をつくるタービンとか発電機、他にもいろいろポンプとかタンクとか、それを繋ぐ配管とか、いろいろあるんですが、そういうものはメーカーが作るようになります。メーカーが現地まで運んで行きまして、私共はそれを決められた図面の位置に据え付ける、という担当しております。

独自の専門技術

唐橋 非常に専門性の高い工事だと思うんですけど、どういった技術が必要ですか?

笹岡 そうですね、建設をする場合は、まず施工計画というのが必要になってきます。物を決められた位置に移すにはどういうルートで物を運搬するか、例えば350トンぐらいの品物を20メーターぐらい移動させなければいけないような場合、クレーンで掴んで置けばいいのか、クレーンが使えないので、何か転引きしなくしてしなくちゃいけないのか、という施工計画というのを立てなければいけません。それでどういう工法であるかということを決めなければいけません。
それから詳細の工程を決めなければいけません。それから詳細の工程を作った後に、人員計画、とれぐらいの人がいて、何人ぐらいの人間が必要なのかっていう人員計画。それを立てなければいけません。その後、施工要領書というのをつくる必要が出てきます。そういう工事計画力というのが意外とどこの会社でもできるわけではなくて、大きな発電所を建設できる会社はそういうところがしっかりしているというところですね。
そのあと施工管理ですね、そういう工事計画力と施工管理能力、そういうところが一番大変なところであります。

唐橋 やはりこの長年の経験が必要ですか?

笹岡 豊富な経験と高い技術力が必要だと思います。

発電所の新規建設

唐橋 東日本大震災以降多くの原子力発電所が停止しまして、主に火力発電に頼っているわけなんですけれども、現在発電所の新規建設、どのようになっていますか?
笹岡 東日本大震災の前の火力発電所の基準は、大体61%ぐらいだったんですよ。その後、84%ぐらいになったそうです。それで止めていた火力発電所、もう廃館にしようというような火力発電所も、無理して動かして4、5年ぐらい前から、新規事業用発電所を作ろうという動きがかなり出てきまして、今ラッシュになっています。
ただ、これも二酸化炭素の問題もあるようで、石炭火力発電所はなかなか国が認めないというような状況になりつつあって、あと2、3年もしたら大型ボイラの火力発電所の建設はもうほとんどなくなってきます。
ただ新電力と呼ばれる新しい電力会社が出てきまして、小型のバイオマスの発電所をかなり作るようになっています。それはうちの営業が調べたところによると、作って終わってるのもありますし、今建設中もありますし、これから計画されたのをあわせて230基ぐらいあるというような状況です。ですので、バイオマスはしばらくは続くとは思うんですが、ただ出力がはあまり大きくないので、事業用ボイラを賄うほどの出力にはならない、という状況ですね。

唐橋 電力の自由化が背景にあるわけですよね。新規建設が減少傾向にありますと、経営にも影響があるんじゃないでしょうか?

笹岡 五、六年先を見据えて、会社の中でいろいろ戦略的な会議を開いているんですが、今までは建設を終わった後、メンテにあまり入ってなかったんですが、今後はメンテにできるだけ入って仕事を確保したいと。

メンテナンス事業

唐橋 メンテナンス事業、具体的には?

笹岡 火力発電所ですと、蒸気を作るボイラというのはだいたい2年に1回、それからタービン側は4年に1回、原子力発電所ですと13ヶ月プラスマイナス1ヶ月以内に定期検査を行いなさいという、そういう決まりがございます。止めた機器を分解して、点検をして異常がないのか全部調べて、あとは手入れをしてそれで消耗品、そういうものを交換して、新たに組み直しして試運転をして、問題がないかどうかを確認して、トータル的な運転に繋げていくと、そういうのがメンテと称する工事ですね。

泡の力で生活習慣を変える!家族愛によって生み出された最先端技術の誕生秘話

水と空気で新たな生活習慣の価値を提案する企業がある。株式会社サイエンス 取締役会長 青山恭明。サイエンスは「今日の感動が、永遠の喜びに」をテーマにビューティー・ヘルス・リラクゼーション・ウェルネス・医療分野に事業領域を広げている。

青山 マイクロバブルっていうのは、字のごとく超々小さな泡で、1000分の1ミリとかいうレベルの泡のことを言うんですね。

保湿、温浴、節水の効果が期待できるだけでなく、浸かるだけで洗えるために、高齢者や介護ヘルパーからも喜ばれている。

青山 気持ちいいなぁ、白いお風呂に入ってるだけで、500万個の毛穴を全部クリーニングしてくれると。

日本発の技術を世界に向けて発信するとき、そこに新たな価値が生まれる。賢者の選択 FUSION

松尾 賢者の選択 FUSION、ナビゲーターの松尾英里子です。改めて本日のゲストをご紹介します。株式会社サイエンス 取締役会長 青山恭明さんです。よろしくお願いいたします。

青山 よろしくお願いします。

松尾 まずは、サイエンスの事業と歴史をコンパクトにご紹介するショートイントロダクションです。

株式会社サイエンスは、2007年に現在の取締役会長 青山恭明が設立。設立当初より、浄化水装置、マイクロバブル入浴装置など、水にこだわった商品の開発・製造・販売で事業を展開。2015年には、ライフデザインホーム事業として住宅の販売を開始。現在も「新習慣」というキーワードのもと、新たな生活習慣の価値を提案し続けている。

マイクロバブルとは

松尾 改めて伺いますけれども、マイクロバブルというのはどのような泡なんですか?

青山 普通の泡、皆さんが目に見えている泡というのは、ミリバブルとかセンチバブルとか言ってるんですが、マイクロバブルっていうのは、字の如くで超々小さな泡で1000分の1ミリとかいうレベルの泡のことを言うんですね。普通の泡とは違う特性を持ってまして、全部マイナスの電位を帯びてるんですね。すると例えば、汚れとかそういう有機物は大概プラスの電位を持ってますから、どんどんマイナスの電位を持ったマイクロバブルがくっついていって、剥離をするという面白い特性がある泡なんですね。

マイクロバブルトルネード

こちらは、マイクロバブルを使った入浴装置「マイクロバブルトルネード」の模型。今回はこの模型を使ってマイクロバブルの体験をさせてもらう。

青山 これが、本当にお風呂だと思っていただきまして、片手体感でちょっとめくっていただきまして、さあ今からお風呂に入るときにスイッチを入れていただきます。

松尾 わかりました。

青山 すると、お風呂の中に煙のように。

松尾 わぁ!細かい泡が出てきましたね!

青山 はい、もう泡というより煙が出てきている感じでしょう?

松尾 そうですね!

青山 どうぞ手をドーンと入れてください。

松尾 泡が出ているなっていう感じすらしない。

青山 まったく普通のお風呂に入ってる感触ですよね。

松尾 白い入浴剤の中に手を入れたような感覚です。

青山 実はこれ全て泡なんですね。

松尾 へぇー!

青山 これで見ていただけるとよくわかりますが。白いですよね。そこから、だんだん透明になってきましたでしょう?

松尾 そうですね、ビールの泡が上がっていくような。

青山 そのとき初めて泡なんだとわかっていただけるんですね。この泡というのは、マイナスの電位を持っています。で、毛穴の中にある、本来洗いたい皮脂、汚れであったり、匂いの元あったり、そういう有機物というのは全部プラスの電位を持ってますから、小さいから入るんじゃないんですね。マイナスの泡ですからプラスにどんどん汚れにくっついていって、剥離をして、浮き袋の役割でどんどん出していくと、だから4、5分つけていただきまして、後ほどスイッチを切って透明になったときに、ショックをうけていただきます。

松尾 ショック!?

青山 今で4分ぐらいですね。濡らしたからしっとりしたんだと思われたくありませんから、これで完全に拭いてください。

松尾 では、引き上げてみますが…。

青山 はい、よく拭き取ってください。濡れてたらわかりませんからね。乾く状態にしてほしいんですね。ちょっと指輪だけ預かりますね。

松尾 はい、わかりました。

青山 どうでしょうか。手の色を比べてください。こっち反対と比べてください。

松尾 えぇ!?見違えるようといったら…。

青山 透明感出てますでしょう?

松尾 はい。こちらのお風呂に浸かっていた方はほんのりピンク色ですね。

青山 透明感が出てるでしょう?

松尾 全然違いますね!

青山 それとね、色だけではなくて、自分で触り比べてください。反対の手。

松尾 入らなかった方はいつもの私の方も手触り。もう片方、お風呂に入った方。

青山 他人の手です。

松尾 えええぇぇぇ!?

青山 びっくりするでしょ?

松尾 赤ちゃんのほっぺたみたいな。

青山 みなさん同じセリフをいわれます。

松尾 やわらかーい!

青山 自分の子供が赤ちゃんのときに触った感触を思い出したと言われますね。

松尾 透明感と清潔感に溢れた柔らかい肌になっています。

青山 はい、明らかに色自体も違いますしね。

松尾 そうですね。

青山 すごいでしょ。

松尾 もうできることなら全身浸かりたい。顔まで浸かりたいっていう気持ちです。

青山 皆様、今までマイクロバブルのお風呂使ってる方って大概顔浸けてるんですね。

松尾 そうですよね、お気持ちわかります。

青山 そうなんです。実はお客様からのアンケートの中にね。首から下は使ってるだけで綺麗になるんだけど、どうしても顔と髪の毛をもっと手軽に、潜らなくても何とかしてもらいたいという要望がすごくて、これ3年かかったんですが、新しく開発した商品というのが「ウルトラファインミスト ミラブル」っていう。

松尾 ミラブル。

青山 はい、シャワーヘッドなんですね、

松尾 シャワーヘッド!こちらが新商品なんですね。

青山 そうなんです。ご自宅のシャワーヘッドをくるくると回して外して、これクルクル、ピッ。これで終わりです。

松尾 ずいぶん簡単になりました。

青山 そうなんです。これはですね、この真ん中の部分、このサイドに3ヶ所の穴、ここから空気を呼び込みまして、頭の中でここはちょっと企業秘密ですが、あることをして、この真ん中からですね、頭洗うときは勢いが欲しいので、ストレート出しますね。で、いよいよ、さあ女性の方、顔のお手入れしたいときはきついですから、これをワンタッチで切り替えていただきますと、この外周からウルトラファインバブルという、これはもうひと桁小さい1ミクロン未満、1万分の1ミリっていう泡が、霧の中に入ったミスト状で出てきます。シャワーヘッドの形をした美顔器だと思っていただきたいですね。

創業111年の老舗化学メーカーの事業戦略。「持続的成長」に 必要不可欠な要素とは

コア技術を育て上げ、世界トップレベルに発展した化学メーカーがある。DIC株式会社。

猪野 もうただのインキ屋ではないよと。もっと社会価値を高める事業に質的に転換をしていくんだと。

代表取締役社長執行役員 猪野薫。DICは、化学メーカーとしての顔を持ちながら、3つの領域において社会貢献活動に取り組んでいる。

DIC川村記念美術館。

猪野 私どもの美術館は、印象派から現代美術までということで、時代の要請がいわゆるサステナビリティであって、この流れが元に戻るということはおそらくはない。

企業価値の向上と持続的な成長を目指すとき、新たな価値が生まれる。賢者の選択 FUSION

蟹瀬 賢者の選択 FUSION、ナビゲーターの蟹瀬誠一です。

福井 福井仁美です。さて、改めてゲストをご紹介します。DIC株式会社 代表取締役社長執行役員 猪野薫さんです。よろしくお願いいたします。

蟹瀬 よろしくお願いいたします。

猪野 よろしくお願いします。

福井 まずは、DICの事業と歴史をコンパクトにご紹介するショートイントロダクションです。

DIC株式会社は、1908年に川村インキ製造所として創業。その後、有機顔料、合成樹脂事業に参入し、印刷インキメーカーから化学メーカーへと歩み出すとともに、事業の多角化を進めていく。創業時からグローバル展開を視野に入れ、1962年に大日本インキ化学工業株式会社へと社名変更後は、M&Aなどで本格的に海外展開を進め、世界有数のファインケミカルメーカーに発展を遂げた。2008年の創業100周年の際に、社名を現在のDIC株式会社に変更。ブランドスローガン「Color & Comfort」のもと、持続可能な社会に向けた製品開発を進めるとともに、さらなる飛躍を目指して事業を展開している。

化学メーカーへのシフト

蟹瀬 まずお伺いしたいのですけども、創業当時、これはインキ事業を中心に事業展開をされてこられたわけですね。どのあたりから化学メーカーの方にシフトされていったんですか?

猪野 元々インキで創業いたしましたけども、インキの原料というのは主に顔料と合成樹脂。それを輸入して原料でインキを生産していたのが、自前で生産するようになった。ここがある意味では化学メーカーの走りなのではないか、このように思っております。

蟹瀬 シフトされたのは何年代なんですか?

猪野 1950年くらいですかね、ええ。

蟹瀬 そうですか。それで60年代くらいになってくると、日本でもいろんな日用品に合成樹脂が使われるようになりましたよね?これはやっぱり需要が伸びてくると、それに対していろいろ対応していかなきゃいけないということになるわけですよね?

猪野 いわゆる日用品の類で、需要が急増するというところとはちょっと異なりまして、ただ、工業用途の物も高度成長期時代、相当急増しましたので、そういう生産体制は日本を中心に、特に3工場体制、今でもそうなんですけれども、そこを相当ブラッシュアップしてきたということになります。

グローバル展開

福井 今本当に世界的にも展開されているということなんですけれども、その当時からグローバル展開っていうのは視野に入れていらっしゃったんですか?

猪野 元々ですね、私ども創業家の方々が、いわゆるグローバルマインドっていいますか、そういうところが特に強い持ち主だったようですね。私が入社したときも、創業二代目、三代目の方だったんですけれども、海外の成形から始まってM&A、当時、日本の化学会社としては、かなり先手を打って買収を仕掛けていって、グローバル化をしていった、そんな会社だったというふうに記憶してます。

蟹瀬 日本の企業って日本の国内のマーケットが割と潤沢で、あんまり外の方へ目が向かなかったことが多かったですよね。そういう意味では、先駆的に先代の方々がご覧になったって、何かモチベーションはおありだったんですかね?

猪野 特に技術者魂といいますか、技術者の夢としては自分たちが開発して1つモノになったものを、もっと世界に広くあまねくそのまま伝えたいと、そんなような思いがあったようですね。

社会貢献

蟹瀬 かつては企業は、当然のことながら利益を上げていかなきゃいけない。これはもう一番中心にあるわけですけれども、環境問題だとか、それからいろんな社会貢献をしていかなきゃいけないっていう流れになりましたよね。そのあたりはどういうふうに対応されていますか?

猪野 今ひとつ時代の要請がいわゆるサステナビリティであって、特に欧州のブランドオーナーがリサイクルのできないフィルムを使わないだとか、色素合成ではなくて、天然系のものを使うだとか、いうことを既にもう宣言をしていて、新聞報道、テレビとかを見てると、もうこの流れが元に戻るということは、おそらくはない。ただ、当然企業としてはその中で、利潤を儲けないと続きませんので、いわゆる社会価値の向上と、それからそれによって追求した結果、我々も得られる経済価値の増加が、常にシンクロすることで投資と正の循環を施していく。
投資家の皆さんも短期的な利益よりも、より中長期的な企業価値の向上というところを求められていて、ある意味ではそういうことの中で少しペイシェンス(忍耐)を持っていただくような、そんな世の中に変わってきてるのかなっていう感じはしております。

近い将来日本は亡国になる!? いま最も投資されるべき分野 「教育」の重要性

世界が認める日本人建築家がいる。学歴や師弟関係が重視される建築界において、独学で建築を学び、数々の作品を通して己の美学を貫き、世界の頂点に上り詰めた男。建築家 安藤忠雄。

安藤 もっと支援をして、もっといい生徒を世界中から呼んでくる。世界中から来て頂けるような教育をせないかんのではないかと思っています。

日本人に考える力を説く実業家がいる。60歳のとき、社員のライフとワークの両立に力を入れた生命保険会社を創業。現在は、世界を変えるという旗を掲げた大学の長として、未来の人材を育てている男。立命館アジア太平洋大学 学長 出口治明。

出口 今大学で学んでいる人が、10年後には日本を支えるわけですから。そこに投資をしないで、どこに投資をするんだと。

建築界の雄と、若者を導く大学の雄が相まみえるとき、そこにはきっと、光り輝く未来への道標がある。二つの魂がぶつかり合うとき、新たな価値が生まれる。賢者の選択 FUSION。

唐橋 賢者の選択 FUSION、ナビゲーターの唐橋ユミです。改めてご紹介します。建築家の安藤忠雄さんと、立命館アジア太平洋大学 学長 出口治明さんです。よろしくお願いいたします。

出口 よろしくお願いします。

安藤 よろしくお願いします。

唐橋 お二人の出会いは?

安藤 初めて。

出口 初めてです。

唐橋 初めてですか!

出口 直島に行った時に地中美術館を拝見したりして、安藤先生のお名前はずっと前から、はい。

唐橋 どのような方だとイメージされていました?

出口 意外にイメージ通りで、とても素敵な方でした。

唐橋 素敵ですって!

安藤 私は立命館大学は情報でよく知っていますが、お会いするのは初めてです。

教育の重要性

1960年台後半から、建築家として世界中で仕事をしている安藤だが、後進の指導と育成のため、1997年から東京大学で教鞭をとっている。1人の教育者として安藤は、教育の重要性をどのように考えているのか。

安藤 サイエンスと技術と、それから文化というようなことを盛り上げていかないと、日本の国の立場がないんではないかと思うんですね。そういう面では、もっと支援をして、もっといい生徒を世界中から呼んでくる。アジアも多いですけども、世界中から来ていただけるような、教育をせないかんのではないかと思ってます。

唐橋 今の世界中からという意味では、出口さんは大学の(視点からいかがですか?)

出口 全く同意見で。今大学で学んでいる人が、10年後には日本を支えるわけですから、そこに投資をしないで、どこに投資をするんだと、僕も思いますが、一番投資ができない原因は、プライマリーバランスが壊れて、お金がないからですよね。しかるべく、必要な税金も上げて、プライマリーバランスをちゃんと回復して、教育に投資をする、それが一番、国家100年の計の基本だと思います。大学って何だろうと考えたとき、アメリカには、100万人を超える学生が世界中から集まってきているんですよ。
アメリカはものすごく学費が高い。500万超えます。生活費も高い。500万ぐらいかかります。ということは、世界中から優秀な人が1000万円持って、アメリカの大学に来るということは、有効需要を10兆円を生み出すんですよ。それだけではなくて、そこで学んだ人がいろいろアイディアを出して、GAFA(ガーファ)とかユニコーンを作ってるんで、大学は戦略的な大産業なんです。技術とか文化とか、いろんな先端科学とか、いろんなものを生み出しているわけですから。やっぱり大学に投資をして、世界中から優秀な人があそこ行ったらおもろいでと、ドキドキワクワクするでと、そういう大学を作って、世界中から人を呼んできたら、お金も持ってきてくれるし、それだけではなくて、新しい産業を生み出すんで。大学は成長産業だと、戦略産業だという視点を持つべきだと思います。

大学のあるべき姿

唐橋 大学に入っても私も人のこと言えませんが、勉強しなかったりっていう学生も多いですよね。

出口 これはね、100%企業が悪いと思うんです。

唐橋 100%!はい。

出口 だって、何で大学行くんですかと言えば、普通の人は良い会社に入りたいと思っていくわけですよ。その会社の採用基準に成績が入ってない、クラブ活動やアルバイトで頑張った経験を話してごらんとか、こんな採用やってたらどうして勉強するかっていう話です。
グローバル企業は「成績表持っておいで」と、「ちゃんと好きなことを勉強した?」それを聞いて、自分の好きなことを一生懸命勉強した学生を採用するわけですよ。だから、日本人が怠け者じゃなくて、日本のシステムが勉強させないようになってる。それは僕は、企業が間違ってると思います。成績採用をやるべきです。

唐橋 安藤さんは、どう思われます?

安藤 ともかくね、日本の学生さん勉強しない。我々の知ってる限りで言うと、偏差値教育をする。同じような顔したね、同じようなスタイルのね、同じ頭の人集めたら駄目ですね。やっぱり交流っていうのは、例えばインドネシアもいると、ベトナムもいると、もちろん日本もいると、韓国の人もいろいろな人たちが、学生時代にやっぱ交流する。交流がね、新しい世界を作るんですよ。地球の中をどこでも動いていかないかん時代になっているのに、日本人だけは非常にめでたい島国の中にいると。やっぱり日本の中だけで教育しとったら駄目ですね。そろそろ日本だけの教育やめろと。

地球は一つ。人類が生きるために求められるこれからのリーダー像とは

世界が認める日本人建築家がいる。

安藤 学歴もないし、学力もないし、専門学校も出てないので建築をやりだしたわけですけれども、そのときに全力で生きると。これでいけば、悔いがないと。

安藤 今一番重要なのはやっぱり、子どもの教育ですよ。やっぱりそういう地球の中で共に生きてるんだということを、しっかり考えてくれる子どもを作らないかん。

建築家 安藤忠雄

日本人に世界の楽しさを広めた経営者がいる。

澤田 僕は本当は自分が旅が好きだから、旅行の仕事はしたくなかったんですね。貿易をやろうと思ったんですけど、その貿易はたまたまできなくなって、じゃあ食べていかなくちゃいけないので、旅行業をやろうということで。

澤田 平和だと旅行も行けますし、いろんな方がやっぱり楽しんでいただいたり、良くなりますから、やっぱり常にやっぱりみんなで考えるのが、僕はいいんじゃないかと思いますね。

株式会社エイチ・アイ・エス 代表取締役会長兼社長CEO 澤田秀雄

前回に引き続き、建築界の雄と、ベンチャービジネスの雄が相まみえる。二つの魂がぶつかり合うとき、新たな価値が生まれる。賢者の選択 FUSION。

唐橋 賢者の選択 FUSION。ナビゲーターの唐橋ユミです。では、改めてご紹介いたします。先週に引き続き、今日のゲストは建築家の安藤忠雄さん、株式会社エイチ・アイ・エス 代表取締役会長兼社長CEO 澤田秀雄さんです。よろしくお願いいたします。

澤田の一人旅

澤田が学生だった1970年代前半、まだ個人で海外旅行を楽しむことが珍しかった時代に、澤田は世界50ヶ国以上を旅して回った。起業してからは多忙を極めたため、なかなか長期で旅をすることはなかったが、2018年3月、澤田は休暇をとり数ヶ月間の一人旅に出たという。

安藤 澤田さんこの間行かれたんでしょ?また、高齢者が地球を回る。

澤田 いやまだ高齢者でないですから!

唐橋 それはどちらですか?

澤田 今回はヨーロッパですけどね。

安藤 だいたいヨーロッパのどこですか?

澤田 今回は東欧の方、ポーランドを中心に回って、3ヶ月ちょっと旅行を1人でしました。

安藤 3ヶ月も!

唐橋 特に一人旅がお好きなんですか?

澤田 いや、そんなことはないんですけど。もちろん、うちの家内とも行きますし、一人旅でも行きますし、向こうでいろんな人とも会ったりもしますから。

安藤 ポーランド行ったらポーランドで、またその人たちと知り合う。違う人たちと知り合うことの中に、また交流して新しい世界ができる。文明は交流しないとできない。今の若い人は交流しないで、ズーッと携帯とコンピューターだけ。気の毒やな。この人たちあんまり長生きしないわ。発散してないもん。それにもう一つ一番問題は、スマートフォンですよ。これ使ってると頭がクラッシュするんですよ。それでも、大体今の若い人の寿命は63かな。我々の世代は大体95や。なんでっていうと、我々の世代はこれ(スマートフォン)を使えてない。私も使えていないんですけども、そういう人たちは95まで自分の足で歩いて、自分の体使ってやってます。

唐橋 確かに、インターネットを見て、行った気になっているということありますもんね。

澤田 体で感じて目で見てみて、やっぱ美味しいものを食べて。行かないと全然これ(スマートフォン)で見てても疲れるだけですよね。

旅での気づき

澤田は、長期間旅をすることで様々な人に出会い、刺激を受け、これまでにない大きな気づきを得たという。

唐橋 やはりこう旅に出ますと、何か気づきっていうのが多いんですか?澤田さんも。

澤田 そうですね、昔から何回も行ってますけど、やっぱり行くごとに新しいことにめぐり合ったり、感じたりしますから、感受性の強くない僕でも感じるわけですから、若い人はどんどん世界を見て感じて、苦労してですね、それをすることによって新しいものが生まれたり、チャレンジ精神ができますから、どんどん僕は行っていただきたいな、と言うふうには旅をして感じますね。

唐橋 具体的にどういうところに心にグサッと刺さるというか、感じることがあるんですか?

澤田 うん。やっぱり自然もそうですけど、ヨーロッパなんか行くと歴史がありますから、建物もそうですし自然もそうですし、有名な遺跡なんかもありますけども、そういうのを見るとですね。何とはなしに、こういう感覚があるんだなということで、感性というか、感じを受けますから、非常に僕は旅はいいと思いますね。はい。

長期不在

ベンチャー企業から、今や押しも押されもせぬ大企業へと成長を遂げた、エイチ・アイ・エス。そのトップに立つ澤田が長期間不在になることで、会社に影響はないのだろうか。
実は経営者としては、そこにも狙いがあるのだという。その狙いとは?

唐橋 旅行されている間、会社のトップがいないという状態ですよね?

澤田 全然問題ないですよ。僕は数年前、十数年前も3、4ヶ月、会社離れて旅行したんですよ。その時は、会社がちょっとぐらつきましたけどね。今回、去年行った3、4ヶ月旅行したときは、僕がいないほうが発展してましたですね。

唐橋 あーそうですか。

澤田 組織が出来上がってきたので、嬉しく思いますね。はい。人が育ったんじゃないかと思います。

唐橋 あえて育てたんですね?

澤田 やっぱり我々の仕事は人を育てるのが仕事ですから。

失敗を恐れずに挑戦する!二人の巨人が語る、世界を少しでも良くする考え方

世界が認める日本人建築家がいる。冷房も暖房もない「住吉の長屋」。壁面のスリットから自然の光が十字に差し込む光の教会。荒廃した島を緑とアートでよみがえらせた直島。学歴や師弟関係が重視される建築界において、独学で建築を学び、数々の作品を通して己の美学を貫き、世界の頂点に上り詰めた男。建築家 安藤忠雄。

安藤 専門学校も出てないので建築をやりだしたわけですけれども、そのときに全力で生きると。これでいけば、悔いがないと。それが青春だと。

日本人に世界の楽しさを広めた経営者がいる。日本発の海外旅行を主軸とした旅行事業、経営破綻に追い込まれたテーマパークの再生事業、ロボットによるサービスをメインとしたホテル事業、机二つと電話一本から事業を開始したベンチャー企業を日本が誇る一大企業へと成長させたビジネスマン。株式会社エイチ・アイ・エス 代表取締役会長兼社長CEO 澤田秀雄。

澤田 常に新しいことにチャレンジして、旅をするというのが自分の青春だと思ってますけどね。

建築界の雄と、ベンチャービジネスの雄が相まみえるとき、そこには、未来へ続くロードマップが広がっている。二つの魂がぶつかり合うとき、新たな価値が生まれる。賢者の選択 FUSION。

唐橋 賢者の選択 FUSION。ナビゲーターの唐橋ユミです。では、改めてご紹介いたします。建築家の安藤忠雄さん。株式会社エイチ・アイ・エス 代表取締役会長兼社長CEO澤田秀雄さんです。よろしくお願いいたします。

出会い

唐橋 お二人の出会ったきっかけですとか、どこでってのは覚えてないんですか?

安藤 ぜんぜん覚えてない。

澤田 ぜんぜん覚えてないですねぇ。一つ覚えてるのはですね。僕が経営者団体の理事長やってた時に、安藤さんを講演にお願いしたことあるんです。いやもう安藤さんはね、わからんような建築家で素晴らしい建築をたくさんやっておられますから、素晴らしいなと感じてます。

建築との出会い

青春―それは誰もが通り過ぎる道。安藤と澤田はどんな青春時代を過ごしてきたのか。

安藤 私は学歴もないし、学力もないし、専門学校も出てないので建築をやりだしたわけですけれども、そのときに全力で生きると。これでいけば、悔いがないと。それが青春だと。悔いのない青春を送りたいと思いました。

唐橋 何かあれですか、いい出会いとか、たくさんありました?

安藤 やっぱり出会いをキャッチするのは感性でしょう?私は、自分の家の平屋の長屋を二階建てにした時に、大工さんが一心不乱に働いている姿を見てこれは面白いと思った。そこで、建築の関係を行きたいと思ったんですが、やっぱり一心不乱に働く人から瞬間に学んで。あとは全力でやれば何とかなると。

住吉の長屋

30代半ばで発表した「住吉の長屋」で、日本建築学会賞を受賞した安藤は、コンクリート打放しによる独自の表現を追求している。

安藤 「住吉の長屋」という家を作った頃からずっとその家は、中庭があって中庭から入ってくる自然と光だけで、空気だけで、冷暖房ないと。施主が「安藤さん寒くなったらどうするの?」と。寒かったらシャツ一枚着ろと、「もうちょい寒かったら?」もう一枚着ろと。「もうちょい寒かったらどうだ?」諦めろと。予算がないんですから。自分の体を以て、できる範囲のことをやればね。相当寒さもカバーしますよ。だから、私はずっといくつものいわゆる商業施設もありますし、公共施設もありますけれども、パブリック空間にはもう全然冷暖房しない。部屋の中だけやってたんです。
十分じゃないですか。日本中どうですか?もう通路は冷暖房してある。そんなところを歩いててね、感性の高い日本人が出来ると思えない。皆そう言うたら、「んん!賛成!」言うんですけどね。家帰ったら「寒いなぁ。」言いよる。私に頼みに来る人は「安藤さん、ぜひ安藤さんの設計頼みたい。」「寒いですよ。」言うたら、まぁ2人に1人は帰っていくわ。「温かいところ欲しいです。」言うて。

青いりんご

安藤の心に常にあるもの。それは、「青いりんご」。

安藤 私ね、この頃青いりんごに凝ってるんですよ。青いりんごがいいと思ったのは、日本人すぐちょっと人間ができたなというじゃないですか。人間出来ん方がいいと思うんですよ。澤田さんが今、外国一人で行ってみようと思うのは、青春があるからですよ。
まだ求めてるものがある内が、青春なんですよ。なんかおもしろい。だから青いりんごで、アメリカの詩人さんサミュエル・ウルマンが言ってんのは「20代30代だけが青春ではない」と、「60代70代も求めているものがある限り青春」だと言ってる。
私あっちこっち講演会する時に「青いりんごで行け!」と、85歳でも90歳でも青いりんごで行ってくださいという講演しとるんですよ。そのためにこの青いりんごを作ったんですけど、これは軽いもうプラスチックですけどね。これに名前書いてサインして差し上げて、青春の限り生きてくださいよ。青春のないおじさんでも「くぅぅぅ」出てくるらしいですよ。

唐橋 まだ熟してないね。

安藤 熟さないほうがいい!

唐橋 熟さないほうがいい。

安藤 今ね、兵庫県立美術館にね、ギャラリーができたんですよ。今度新しく。そこのところに3メーターの青いりんごを作りました。そのりんごを触ったら青春いけますよ、よう来ますよいっぱい。

唐橋 ご利益がありそうですけど!

安藤 ご利益ありそうでしょ!